2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト破裂脳動脈瘤の瘤壁性状に応じた流体解析と免疫組織解析による破裂機構の解明
Project/Area Number |
23659678
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 若樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (40421961)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 拓也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30597464)
寶金 清博 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90229146)
黒田 敏 北海道大学, 大学病院, 講師 (10301904)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 脳動脈瘤 / 脳動脈瘤破裂 / フィブリン / 血栓 |
Research Abstract |
平成23年3月末までに、臨床例における脳動脈瘤クリッピング術後の動脈瘤組織標本を計47個(破裂例35個、未破裂例12個)を取得できた。これらの全例に対して、ヘマトキシリン・エオジン染色と、エラスティカ・マッソン染色による評価を終えたところである。破裂脳動脈瘤に特徴的な所見として、<1> 動脈瘤内皮下のフィブリン析出、<2> 内膜内への炎症細胞の浸潤(これはリンパ球を主体とする部位と好中球を主体とする部位とがあり、時相の異なる炎症が存在することが示唆される)、<3> 内壁表面における層状の血栓形成などが見られた。これらの所見は、破裂動脈瘤においては破裂点近傍はもちろんのこと、そこからやや離れた部位にも高率にみられたものの、未破裂動脈瘤ではほとんど認められなかった。 一方で、内皮細胞の存否やその状態も重要な検討項目の一つである。これについてはまだ一部の症例のみだがCD34による内皮細胞の免疫染色も試みている。まだ確たる結論には至っていないが、おそらくは動脈瘤内の部位によって内皮細胞の存在状態は変化しているものの、形態としては存在している部位もありながら、その機能が低下しているような状態であることが推察された。 これらの所見から鑑みると、動脈瘤の破裂は単に力学的な負荷のみで破裂をきたすわけではないことはもちろん、炎症のみで説明できるものでもなさそうである。力学的要素に影響を受けた何らかの内皮障害に端を発し、その修復過程としての血栓形成そして炎症反応の反復が、やがては壁の崩壊をきたすことで破裂するのかもしれない。現時点で得られた病理組織所見は、一連の破裂にいたる過程の一部を見ているにすぎないが、単に炎症だけではなく、血栓形成が関与している可能性を見出したことは、非常に意義の高いことである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、手術顕微鏡下所見、光顕的病理組織評価、免疫組織評価、電顕的病理組織評価、Computed Flow Dynamicsによる流体力学的解析 の要素によって構成されている。手術顕微鏡下所見は動脈瘤標本取得時に随時術中DVD映像から整理されているものである。免疫組織評価はまだ一部にとどまり、電子顕微鏡評価は未施行だが、光顕敵意病理組織評価は現有する標本についてはほぼ完了している。 CFDについては、ソフトウェア・プログラムのセットアップを整えたところであるが、すでに各臨床例のDICOM画像データは収集してあるので、解析を開始できる段階にある。 2年間計画の半分の期間が過ぎた時点であることと照らし合わせて考えると、ほぼ順調に進展しているものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず一つに、免疫組織学的評価を拡充していくことが挙げられる。内皮細胞の機能を評価する免疫染色はもちろんのこと、MMP-2・MMP-9・MCP-1・MCAP-2などの炎症反応に関連する因子も調査が必要であろう。また、動脈瘤壁においては変性した内膜に代わって膠原繊維が増成している状態も見られたことから、コラーゲンに関する免疫染色もおそらく有用であろうと計画している。 電子顕微鏡観察は操作電子顕微鏡による内皮細胞の形態的評価が目的である。一つの動脈瘤内で肉眼的性状の異なる部位ごとに評価したいが、合わせてそれぞれの部の光顕所見とも対比したいので、手術中に動脈瘤を摘出した時点で、任意の部位ごとに切離して電顕用と光顕用とに分割して保存する。 CFD解析も平成24年度の大きな要素である。組織解析した動脈瘤の術前画像によるCFD解析をすすめ、破裂と未破裂、それぞれの動脈瘤内の性状の異なる部位ごとに流体力学的特性を対比させ、病理学的所見と力学的所見をリンクさせることにより、破裂機構の解明に大きく近づくことを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は免疫組織学的評価を拡充して行う予定であるが、その染色に用いる各種免疫抗体の購入に40万円を要する。 CFD解析の遂行にあたっては、医療用DICOM元データの保存ならびに解析結果の保存のために、ディスク・メディアと保存用ハードディスクが必要になる。とくに解析結果については計算過程も含めるとファイルサイズが非常に大きいものであり、大容量のハードディスクを要する。これらの調達に15万円を見込んでいる。 その他として、成果発表のための学会旅費や、消耗品雑費などで、15万円を見込んでいる。 これらを総計して70万円を用いる見込みである。 今年度の研究費で、3月に購入した物品等の支払いが4月以降になるため、未使用額14,923円が生じている。
|
Research Products
(2 results)