2011 Fiscal Year Research-status Report
重症脳傷害治療のために病巣核心部に移植するべき細胞種を決定する
Project/Area Number |
23659688
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田中 潤也 愛媛大学, プロテオ医学研究センター, 教授 (70217040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 元 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284414)
高橋 寿明 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20363228)
杉本 香奈 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00581034)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | BINCs / マイクログリア / 細胞移植 / 脳梗塞 |
Research Abstract |
中大脳動脈一過性(90分間)閉塞によるラット脳梗塞モデルを作成し、放置すれば大きな脳組織欠損を生じてしまう実験系において、脳梗塞巣に移植すべき細胞は何かを探る研究を行った。これまで、我々は、脳梗塞巣に集積するマクロファージ様細胞BINCs (Brain Iba1+/NG2+ Cells)を移植すれば、予後が大きく改善することを報告している。今回、より良い細胞移植療法に必要な細胞種の同定を目指し、いずれもラット一次培養細胞のアストロサイト、マイクログリア、神経幹細胞、BINCsの移植実験を行った。現在研究中であるが、これまでのところ前三者の細胞注入による治療的効果ははっきりしない。BINCsと類似するIba1陽性細胞であるマイクログリアについては、むしろ、病巣を拡大させてしまうようである。しかし、BINCsは以前の論文発表と同様に、報告したように明らかな予後改善をもたらす。BINCsはマクロファージの一種と考えられるが、IGF-1やHGF、progranulin等神経細胞保護的効果を有するペプチド類の産生レベルが非常に高いのに対して、神経細胞傷害的効果を有すると考えられるIL-1βやTNFα、iNOS等の発現レベルがマイクログリアに比べると非常に低い。これらの結果は本来脳にあるべき細胞またはそれらの前駆細胞を移植するより、神経細胞保護因子の病巣での産生量を増加させる方が予後改善に結びつく可能性を示している。脳梗塞巣に、神経細胞保護的ペプチドを注入する等の研究はこれまでにも無数に存在し、多くがその有効性を示している事実とこれまでの我々の所見は矛盾しない。今後、移植実験のデータを増やすとともに、BINCsからの神経細胞保護ペプチドの放出量を増やす手段に関する研究などを進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、重症脳傷害組織移植するべき細胞を同定するという目的については、BINCsがその目的の細胞に近いと言うことが明らかになりつつある。この点ではおおむね順調に研究が進展していると言える。本研究の、本来の大きな目的はiPS細胞に分化誘導をかけて、その細胞を得て、患者脳傷害部位に移植するというものであった。しかしながら、BINCsはその由来などがはっきりせず、アストロサイトや神経幹細胞などiPSからの作成法が既知となっているものとは異なり、将来的な臨床応用の方法が見えない点が難しい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、脳梗塞巣に移植することによって、これまでの研究により、BINCsの脳保護効果の大きさが明らかになりつつあるが、アストロサイトや神経幹細胞、マイクログリアの移植研究も進め、移植すべき細胞種を決定する研究をまとめる。また、BINCsの脳保護作用を一層引き出すために、移植実験の中でどのような工夫が可能か、検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験、および細胞培養に必要な消耗品費、学会発表旅費、論文投稿に関わる費用などに使用する
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