2012 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウムをターゲットとした元素置換型齲蝕予防法の開発
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23659960
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 恵美子 東北大学, 大学病院, 助教 (10264251)
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Keywords | う蝕予防 / エナメル質 / マグネシウム |
Research Abstract |
エナメル質は生体内で最も硬い組織であるが、齲蝕により破壊され、人工物による修復に頼らざるを得ない。フッ素を応用した齲蝕予防が行われているが、付加的な齲蝕予防を期待し、マグネシウムをターゲットとした予防法を考案した。マグネシウムは、カルシウム、リン酸に次ぐ、エナメル質の主要構成元素である。マグネシウムは、エナメル質内リン酸マグネシウムとして存在するが、齲蝕の原因菌の多くは、その機能維持のためにマグネシウムを必要とする。したがって、酸により破壊されたエナメル質は、マグネシウムの供給源となることが予想される。そこで、リン酸マグネシウム置換により、齲蝕細菌の代謝活性促進を生じないエナメル質強化法の開発を目的とした。 そこで、ヒトの第一小臼歯のエナメル質を用いた初期う蝕モデルにて、ストロンチウムおよびカルシウムを外部から供給することで、再石灰化行なわれるかどうかを検討した。具体的には、酸処理と再石灰化溶液への交互の浸漬により人工的な初期う蝕病変を作成し、その表面に様々なイオンを含有するコート材と、イオン放出を伴わないコート材の2種類をコートし、再石灰化過程について検討を行った。その結果、ストロンチウムおよびカルシウムを含有しないコート材と比較して、ストロンチウムおよびカルシウムを含有する コート材は、再石灰化を亢進することを見いだした。また、ストロンチウム等を含有する歯面コート材は、ミュータンスなどの口腔細菌の増殖を著しく障害することを見いだした。これらの知見から、再石灰化亢進部分における取り込み元素の測定と、細菌抑制に関わるイオン分子の同定を行なっている。 また、24年度までに作製したアルカリ土類金属リリースマトリックスを利用し、in vitroで初期う蝕の再石灰化を試み、耐酸性と取り込み元素の同定とエナメル質構造の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災により、23年度は研究施設が使用できなくなり、10カ月程度はサンプル調整を除いた、実験や解析が困難であった。24年度は、新しい研究機器の購入や修理により、本来の研究活動が可能となったため、これまでに作製した研究サンプルの解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの永久歯(フッ素塗布されていないもの)を利用し、酸と再石灰化液によるサイクル処理による表層下脱灰モデルを用い、再石灰化溶液に浸漬することで、その溶液中に存在する様々な元素が取り込まれる。この再石灰化溶液中にマグネシウムの含有-非含有の組み合わせとともに、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムを5段階の濃度で添加することで、エナメル質表面に取り込まれた金属元素の定量を、引き続きSEM-EDXにて解析を行う。また、アルカリ土類金属リリースマトリックスを利用し、上記の初期う蝕の再石灰化を試み、耐酸性と取り込み元素の同定とエナメル質構造の解析を引き続き行う。 う蝕細菌に関して、ヒトエナメル質サンプルと低マグネシウム含有培地を用いて、齲蝕細菌と培養し、細菌の酸産生能や細菌由来マグネシウム要求性エノラーゼ等の酵素活性評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していたヒトエナメル質サンプル上でのう蝕細菌を用いた低マグネシウム含有培地の影響の実験を次年度に延期することによって生じたものであり、延期したう蝕細菌実験に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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