2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659976
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (90524984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 剛徳 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30263304)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 歯周組織 / オートファジ- / 老化 |
Research Abstract |
成人の歯周組織は、栄養過多(メタボリック)、成長因子刺激のアンバランス、細菌感染、外傷性咬合などの様々な環境ストレスに常時暴露される可能性があり、その結果として、歯根膜細胞に種々のダメージが蓄積されることで老化が進行する。近年加齢にともなうストレスにより細胞内には異常細胞器官や異常蛋白質が蓄積することで、 恒常性維持能や組織修復再生能が低下し老化が進行するとの考え方が注目されている。 本研究では歯周組織構成細胞、とりわけ歯根膜細胞の増殖,分化および老化の過程における細胞内大規模蛋白分解機構―オートファジーの生理学的役割を明らかにし、得られた結果より、新たな歯周病診断治療法開発のための基盤情報を構築する。平成23年度は、歯根膜細胞を用いたin vitroオートファジー実験系の樹立を目標とした。 歯周組織発生或は再生過程に重要な歯根膜幹細胞から、歯周組織構成細胞(線維芽細胞、骨芽細胞、セメント芽細胞)への分化並びに老化を細胞レベルで評価すること重要であると考えられるため、マウスの歯周組織歯根膜より樹立した細胞株、並びにヒト歯根膜初代培養細胞を本実験系に供した。実際にこれらの細胞株がオートファジー関連遺伝子であるATG5, ATG7, LC3を遺伝子レベル並びに蛋白レベルで発現していることを確認した。歯根膜細胞に誘導される細胞内小胞形成がオートファゴソームであるか否かを検討する為にオートファゴソームをEGFP-LC3, ライソゾームをLysotracker で標識し、共焦点顕微鏡を用いた形態学的な観察並びに生化学的解析により検討を行った。オートファジー誘導剤ラパマイシン並びにオートファゴソーム形成の阻害剤である3-MA、CQで処理した際に誘導される小胞形成をモニタリングすることにより細胞内オートファジーが歯根膜細胞においても活発に作動、機能していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト並びにマウス歯根膜細胞を用いたin vitroオートファジー実験系が樹立されたことにより、細胞内オートファジーが歯周組織構成細胞の恒常性維持を担っていることが明らかとなった。これら実験系を用いて、歯根膜細胞が栄養過多や増殖因子刺激、酸化ストレスなどの細胞老化刺激に暴露した際のオートファジーの動態、反対にオートファジーの機能制御が、歯根膜細胞の老化や増殖・分化に与える影響を in vitroで解析することが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究課題を継続するとともに以下の研究課題を展開する。1、老化刺激に暴露した際の歯根膜細胞のオートファジーの動態の解析(1)栄養飢餓或は過多状態 (2) インスリンやFGF,TGF-beta,BMPなどの細胞増殖分化因子存在、非存在下 (3) 酸化ストレスとしてH2O2或はNOx誘導剤添加下での細胞培養を行い解析を行う。2、オートファジーの機能制御が歯根膜細胞の増殖,分化並びに老化に与える影響歯根膜細胞株の細胞培養系に前述の、オートファジー誘導剤ラパマイシン(rapamycin)並びにオートファゴソーム形成の阻害剤である3-MA(3-methyladenine)、CQ(chloroquine)を添加し、細胞増殖能、細胞老化、栄養代謝能、石灰化能についてその影響を検討する。3、オートファジー依存性の大規模蛋白分解が歯周組織の恒常性維持に与える影響をマウスを用いて in vivo レベルで評価検討する。 健常マウスC57BL6マウスに60%高脂肪食を12週間負荷しインスリン抵抗性を誘導したマウスの歯根膜組織の構造の解剖学的変化を組織切片の免疫組織学方法で検討するとともに、電子顕微鏡で誘導されたオートファゴソームの数や大きさを評価する。この際に、マイクロCTによりヒト歯周病の病態の判定基準となる歯槽骨の計測も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、歯周組織構成細胞を用いたin vitro細胞培養系の実験を行った。従って平成23年度の経費は、細胞培養試薬ならびに細胞の増殖・分化を解析する分子生物学的品質試薬などの実験試薬購入並びに細胞培養のために高品質培養用プラスティック器具購入として物品費731,808円使用した。残りの468,192円は次年度の物品費として用いる予定である。平成24年度は、引き続きin vitro細胞培養系での解析に、実験試薬購入と、高品質培養用プラスティック器具購入として850千円を予定している。本実験計画遂行による研究成果の発表のための学会参加費として国内旅費2回分、国外旅費1回分として500千円を予定している。さらに本実験結果の論文投稿を予定しており、学会誌投稿料150千円を予定している。
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Research Products
(2 results)