2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科長期入院患者の退院支援における患者-家族-多専門職連携モデルの開発
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23660107
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Research Institution | Gifu College of Nursing |
Principal Investigator |
石川 かおり 岐阜県立看護大学, 看護学部, 准教授 (50282463)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 精神看護 / 長期入院患者 / 退院支援 / 専門職連携 / 家族 |
Research Abstract |
(1)文献調査 精神科、退院支援、連携、協働、チーム医療等をキーワードに、国内外における患者・家族・専門職連携に関する既存の文献を検索し、精神科退院支援における連携・協働に関わる知見を整理した。(2)国内聞き取り調査 精神科長期入院患者の退院をめぐる信念対立の構造を明らかにすることを目的として、民間の単科精神病院4施設にて長期入院患者の看護を実践している看護師12名を対象とした聞き取り調査を行った。データは、インタビューガイドを用いた半構成的面接により収集した。許可を得て録音し(インタビューの総時間は10時間44分であった)、逐語録を作成し、質的内容分析を行った。分析の結果、看護師は「看護師間での情報共有・協力がないこと」「専門職間での情報共有・協力・交流がないこと」「専門職間での役割分担が不明確であること」「多職種カンファレンスのための日程調整の難しいこと」を体験しており、看護師が長期入院患者の退院支援が重要だと考えていても、専門職間で連携するための共通基盤となるシステムが構築されていないことが示された。また、看護師は長期入院患者の退院支援を始めようとしても「退院支援をめぐる様々な価値・意見の対立に遭遇すること」によって、「周囲の抵抗・対立のなかで看護師自身が孤立と諦め」を体験し、結果的に「退院支援のために専門職と連携するための看護組織全体のモチベーションの停滞」を招いていた。このような退院支援のために必要な専門職連携におけるネガティブなプロセスには、阻害要因として「退院支援に対する病院組織の消極性」「専門職間のヒエラルキー」「専門職間の非効果的なコミュニケーション」「看護師の力量不足」が関連していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に計画していた文献調査と国内調査に関しては、大凡予定通り進めることができた。しかし、年度末に開催した連携研究者との分析結果の検討の際に、患者、家族との連携における分析が不十分であり、その点について新たな視点を得たので、引き続き分析を行い精錬していくことと、分析結果を統合する作業が必要である。また、成果の公表も平成24年度の関連学会で行う予定である。 平成23年度に計画していた国外の先駆的実践モデルのフィールド調査については実施できなかった。当初は夏頃にフィールド調査をしたいと考えていたが、年度途中まで研究費交付の金額や時期が未確定であったため、フィールドとの交渉など具体的な準備をを進めることができなかったためである。そのため、国外フィールド調査についてはは平成24年度に実施するよう計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成23年度の成果のまとめ・報告:平成24年度は平成23年度の分析の継続とまとめを行い、成果を学会発表や論文等で公表していく。(2)国外フィールド調査:平成23年度から24年度に延期した調査を実施する。海外の先駆的実践モデルの調査フィールドとして1ヵ所を予定しており、12月頃に調査を実施できるよう夏頃を目途に依頼と準備をすすめる。(3)国内フィールド調査:当初の計画通り、国内で先駆的な実践活動を行っているフィールドにて調査を行い、精神科長期入院患者の退院支援における連携のグッドプラクティスを明示する。国内のフィールドについては、現時点で山陰と四国にある2か所のフィールドから協力の許可を得ており、実際の調査は夏頃に開始できるよう準備を進めている。更に関東および中部の2か所のフィールドを選定し、11月~1月頃にデータ収集できるよう準備を進める予定である。なお、フィールドごとに研究代表者と連携研究者の2~3名で赴き、効率よくデータ収集を行うよう計画している。最終年の平成25年度は、(2)と(3)の結果および平成23年度の結果を比較検討しながら、わが国おける既存の連携・協働の方法論と課題を明確にする。さらに、構造構成学的視点からの検討を加え、退院支援上の信念対立を解消し、患者-家族-多専門職が効果的に連携するモデルを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<次年度に使用する研究費が生じた状況>平成23年度に計画していた海外フィールド調査を平成24年度に延期したため、その分の研究費(約340,000円)を平成24年度に繰り越した。<平成24年度の研究費使用計画>直接経費:約940,000円 間接経費:180,000円直接経費使用計画内訳・物品費:書籍、消耗品等80,000円/・旅費:海外調査旅費340,000円、国内調査旅費(4ヶ所×2~3名):300,000円、国内成果発表旅費:50,000円/・謝金:データ入力等の研究補助者および研究協力者への謝礼(または謝品)費70,000/・その他:テープ起こし、英文校閲費等100,000円
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