2012 Fiscal Year Annual Research Report
アザメタラサイクルの創製を基盤とする含窒素へテロ環化合物の合成
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23685019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三浦 智也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378804)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 |
Research Abstract |
トリアゾールの環鎖互変異性によりわずかに生じるα-ジアゾイミンを起点とした遷移金属カルベン種の生成とそれを利用した触媒反応を,筆者らのグループとFokin(米国)らのグループが,最近,それぞれ独立して見出し,トリアゾールが反応基質として高い潜在性をもつことが示された。この研究の過程で,1位に4-トリアゾリル基が置換したアルコールを基質として用いると,α-イミノロジウムカルベン中間体を経由して,分子内で1,2-ヒドリド転位が進行し,エナミノン誘導体が得られることを見出した。さらに,1位に4-トリアゾリル基が置換した環状アルコールを用いると,1,2-アルキル転位による環拡大反応が進行した。例えば、銅触媒の存在下で,ブタ-3-イン-2-オールとトシルアジドから容易に合成可能な1-(1-トシル-1,2,3-トリアゾリール-4-イル)エタノールにRh2(OCOC7H15)4錯体を加え,マイクロ波照射下で140度に加熱すると,(Z)-4-(トシルアミノ)ブタ-3-エン-2-オンが収率94%で得られた。また本反応はワンポット反応に展開でき,末端アルキンから始めて,途中のトリアゾールを単離することなく,エナミノン誘導体へと変換できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含窒素ヘテロ環化合物の新しい合成手法の開発を目指し、反応活性種となるアザメタラサイクルの創出に焦点をあて、以下の三つの柱からなる研究課題を中心に本研究を推進してきた。 1.イソシアナートを窒素源とする完全分子間不斉[2+2+2]付加環化反応 2.トリアゾールの脱窒素過程を経る[5+2+2]型付加環化反応(ポストクリックケミストリー) 3.不活性結合活性化を経るアザメタラサイクルの創製と高選択的環化反応 1番目の研究課題の成果は、既に論文とし、2番目の研究は、現在、論文を投稿中である。3番目の研究課題は、申請時に比べ、既報の例が増えてきてしまい、オリジナリティーにやや難が生じてきたため、2番目の研究課題を今後さらに深めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度から続くこの若手研究の研究過程で見出された、トリアゾールの脱窒素過程を経る分子変換反応(研究目的の2番目)は、入手容易な末端アルキンを出発原料に用い、簡便かつクリーンに含窒素へテロ環化合物を合成する方法として、国内外から注目を集めている。そこで、今後はこの研究に焦点を絞り進めていく。 1.トリアゾールの脱窒素過程により生成するα-イミノニッケルカルベノイド種とアレンとの分子間[3+2]付加環化を鍵過程とするイソピロールの合成とイソピロールからピロールへの効率的な分子変換反応の開発 2.トリアゾールの脱窒素過程により生成するα-イミノロジウムカルベン種と芳香環との分子内[3+2]付加環化を鍵過程とする三環性ジヒドロインドールの合成 3.トリアゾールの脱窒素過程により生成するα-イミノロジウムカルベン種と不飽和アルデヒドとの分子間付加反応を鍵過程とするジヒドロピロールの合成と抗炎症剤「Ketorolac」の迅速不斉合成 4.トリアゾールの脱窒素過程により生成するα-イミノロジウムカルベン種とプロパルギルアルコールとの分子間付加反応を鍵過程とするジヒドロピロールの合成
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