2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高性能EDLC電極材料「カーボンナノジャングルジム」の創製とデバイス化
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23685041
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西原 洋知 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80400430)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電気化学キャパシタ / 薄膜 / 多孔性炭素 / 高表面積 / グラフェン |
Research Abstract |
集電体層となる多孔性炭素フィルム上に電気泳動法によりFAU型ゼオライトを担持し、これをシーズとしてFAUゼオライト膜を水熱合成した。ここにアセチレンCVDを行い、さらにフッ化水素酸によるFAUゼオライトを除去することで、多孔性炭素フィルム上に直接カーボンナノジャングルジムの層を形成した。合成したカーボンナノジャングルジムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、FAUゼオライトの規則構造が転写されていることを確認した。このようにして調製した一体型電極の電気化学特性を調べたところ、内部抵抗が極めて低く、良好なレート特性を示した。従来のカーボンナノジャングルジムは粉末状であったため、バインダーポリマーおよび導電助剤(カーボンブラック)と混合し電極シートを調製していたが、今回調製した一体型電極はバインダーポリマーを含まず粒間抵抗が極めて小さいため、導電助剤を含まずとも超高速充放電が可能であることを実証できた。 一方、カーボンナノジャングルジムの水系および有機系電解液中における分極挙動を調べたところ、活性炭など従来の多孔性炭素では見られないような電気化学的に活性な官能基の大量ドープが確認された。これは、カーボンナノジャングルジムの得意なナノグラフェン構造に起因するものと考えられる。このようにドープされた官能基は大きな擬似容量を示し、なおかつ数千回にも渡って可逆的に酸化還元反応を繰り返すことを明らかにした。分極後の炭素を分析した結果、分極によりドープされ、かつ大きな擬似容量を示すのはある種の含酸素官能基であることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったカーボンナノジャングルジムの合成および一体型電極の調製は、既に現時点で達成できている。カーボンナノジャングルジムの合成はこれまでに例が無く、世界初の成果である。構造の特異性は、軟X線発光分光による価電子の分析によっても示唆されている。当初の目的では、湾曲したグラフェンシートによる電気二重層容量の増加を期待していたが、実際にはカーボンナノジャングルジムは従来の如何なる炭素材料とも異なる極めてユニークな分極特性を示し、しかも分極後には極めて大きな擬似容量が発現することを見出した。水系電解液においては、約700 F/g、有機系電解液においても約330 F/gの超高容量を達成できた。擬似容量発現のメカニズムについても検討を進め、これがカーボンナノジャングルジム特有のナノ構造に起因すること、分極によりドープされたある種の含酸素官能基が可逆的な酸化還元反応を示すことなど、学術的にも興味深い現象を見出すに至った。また、一体型電極の調製により、内部抵抗が大幅に低減することは予想の範疇であったが、バインダーレスの電極構造とすることで、耐電圧も向上することを新たに見出した。 このように、当初の計画にて想定していた以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に述べたように、当初の目的であった高容量を示す新規材料の合成、高速充放電可能な一体型電極の作製には既に成功している。今後はこの材料を実用的に利用するために必要な知見を得ると共に、相応しい対極と組み合わせたデバイス作製に取り組む。 まず、擬似容量発現のメカニズム解明をさらに進める。具体的には、含酸素官能基の中のどのタイプが擬似容量に寄与するのかを明らかにする。含酸素官能基の分析は真空昇温脱離法、FT-IR、およびX線光電子分光にて行う。また、含酸素官能基の耐電圧や耐久性についても明らかにする。また、電解液を様々に変化させた際に、分極による官能基ドーピング挙動がどのように変化するのかについても検討を行う。 カーボンナノジャングルジムの大きな擬似容量を最大限に引き出すため、擬似容量が有効となる最適な作動電位を検討する。また、水系電解液および有機電解液において、最適作動電位を考慮した対極と組み合わせ、非対称キャパシタやハイブリッドキャパシタを構築し、高性能デバイスの実現を目指す。
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Research Products
(13 results)