2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極走査ポテンショメトリ装置の開発と微細加工した表面ラシュバ系のスピン伝導
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23686007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平原 徹 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30451818)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 物性実験 / 表面・界面 / スピンエレクトロニクス |
Research Abstract |
本研究の目的は研究代表者のグループが長年培ってきたナノスケール電気伝導測定技術を拡張し、スピン偏極走査トンネル顕微鏡を新たに建設して微小領域の電位分布測定が可能なポテンショメトリ測定を行い、表面ラシュバ系の電場誘起のスピン依存伝導現象を検出することである。二年目の今年度は次の3つのことを行った。 1.前年度作成した超高真空かつ低温で動作する走査トンネル顕微鏡に超伝導磁石を組み込み、試料垂直方向に最大8Tの磁場を印加できるようにした。またこの装置を用いてSi(111)-7x7清浄表面の原子分解能及びAg(111)表面の定在波観察を行った。 2.超高真空下における微細加工技術の確立を行った。集束イオンビームを用いることでビスマス、ビスマスセレン超薄膜の加工を行った。しかしキャッピング層なしでは削ることを意図していない領域でも何かしらの損傷が起きていることが明らかになった。ビスマスセレンにおいてはセレンをキャップしてから加工し、その後加熱によってキャッピング層をとばすことで損傷なしで微細加工が可能であることが分かった。そのようにして作ったホールバー構造に対して非局所伝導を測定したところ、期待されたスピンホール効果のシグナルは弱いながらも何かしらあることが示唆された。 3.基板によって歪んだビスマスが新奇なトポロジカル状態になっていることが光電子分光、低速電子線回折、第一原理計算を合わせた複合的な研究から明らかになった。 上記成果により論文を5本出版し、6件の招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置開発に関して、本来の目的である走査トンネルポテンショメトリ測定をするには至らなかった。これは電流注入プローブを含めたSTMヘッドが故障し、材質を変えたものに再度デザインし直さなければならなかったためである。幸いなことに今年度中に修理を終えることができたので来年度はこれを用いて、本当の目的であるスピン偏極した走査トンネルポテンショメトリ測定が可能になるはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は作成した装置の最適化を行っていたので本格的な測定には至らなかった。しかしこの作業は無事終了したので、来年度以降はこの装置を用いて走査トンネルポテンショメトリ測定を様々な系に対して行い、最終目的である表面Rashba系のスピン伝導に関する知見を得る。
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