Research Abstract |
本研究の目的は,申請者がこれまで研究を行ってきた自律駆動ゲルを,マイクロ・ナノシステムとの融合により,ケミカルロボティクスを実現することを研究目的とする.ロボットは,機械,電気電子,情報などの技術を総合したシステムである.従って,現在のところ,機械的な金属の身体とシリコンなどの半導体の頭脳を持つことが普通である.これに対して,生体システムでは,多段かつ並行的な多数の化学反応の連鎖により,情報処理からアクチュエーションまでが行われている.本研究は,ロボットのもうひとつの形態として,生体のように化学システムを基礎としたケミカルロボットを実現し,その設計指針を確立するものである. 平成23年度は,化学ロボットを目指した化学ICチップ内のチャネル内を送液させるための自律駆動マイクロポンプの研究を行った.この研究項目自体一つ大きな挑戦であり,予備実験結果を元に設計手法を確立し制御パラメータを明らかにする.これまでの研究成果において,申請者はBZ反応の化学エネルギーで自発的に膨潤・収縮運動を行うゲルを開発してきた.昨年度までの研究において,ゲルの膨潤・収縮変位がマクロなスケールにおいて観察されたので,ゲルのマイクロポンプ化が可能であると考えた.具体的には,ダイヤフラム型マイクロポンプを検討した。自律駆動ゲルの振動運動でPDMS製ダイアフラム膜を振動させ,下部のチャンバー内の体積を変化させ,逆止弁によって流体を一方向に送液する.この原理を実証するために,まず逆止弁なしでの流体駆動の実験を行った.約100μm程度の厚みのPDMS膜を作成し,微小流路もPDMSで作成した.自律駆動ゲルをPDMSに物理的に接着させた後,マイクロチャネル内の流体をポリスチレン粒子で可視化し,チャネルを顕微鏡で観察してチャネル内の流体拍動を確認することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自律駆動ゲルを用いた化学マイクロチップの設計は,非常に困難であろうと予想されていたが,すでに微小流路内での流体拍動の観察に成功しており,今後はパラメータの調整を行うことで,自律駆動ゲルを用いた化学マイクロチップの可能性が見えてきたと考えている.
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