2013 Fiscal Year Annual Research Report
光情報伝達のサブÅ・ピコ秒分解能での全経路詳細解析
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23687019
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須藤 雄気 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10452202)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物物理 / 情報伝達 / 分子認識 / 構造変化 / 光生物 / 分光法 |
Research Abstract |
生命機能を司るタンパク質分子は、適切な「場所」で、かつ「時々刻々」その姿を変えることで、最終的な生理応答を担っている。そのため、機能の本質的な理解には、「場所=空間」と「時々刻々=時間」の理解を突き詰めていくことが重要となる。本研究は、細菌の情報伝達を生物物理学的に原子レベルの「空間」分解能、ピコ秒の「時間」分解能で解き明かすことを目的としている。そのため、1) 情報入力部位、2) 伝達部位、3) 出力部位について統合的・網羅的な解析を行っている。本年度は、以下の成果を得た。 [空間]:光照射固体NMR分光法を用いて、発色団レチナールのシスートランス構造をÅレベルで明らかにした【Yomoda et al., 2014, Angew. Chem. Int. Ed.】。また、様々な発色団アナログを有機化学的に合成し、その取り込み速度から、結合部位の詳細解析を行った【Mori et al., 2013, Chem. Phys.】。 [時間]:超単パルスレーザーによる過渡吸収・蛍光スペクトル変化から、50フェムト秒での超高速異性化反応を直接捉え、ラマン分光法によりピコ秒での分子構造変化を捉えることに成功した【Sudo et al., 2014, J. Phys. Chem. B】。また、時間分解赤外分光法により、ナノ秒からマイクロ秒での大域的な分子構造(βシート)を捉えることに成功した【Furutani et al., 2014, J. Phys. Chem. B】。さらには、分子機能の変換を通じて、ペタ秒で起こった分子進化について考察した【Sudo et al., 2013, J. Biol. Chem.】【Tsukamoto et al., 2013, J. Biol. Chem.】。 このように、空間・時間領域ともに、計画した分解能を越えるレベルでの構造・構造変化解析に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「空間」および「時間」分解測定の極限に挑戦し、生物が示す光情報伝達機構を高い分解能で明らかにすることを目的としている。そのため、どこまで詳細に、どこまで高速に解析できたかが一つの研究達成度の指標とある。 [1] 空間領域では、高い(~Å程度)分解能を持つ振動分光法、NMR分光法、X線回折法などを用いて、不活性型及び活性型分子における構造や構造変化を明らかにしつつあり、既に10報近くの原著論文として報告している。 [2] 時間領域では、当初計画したピコ秒より2桁程度高速領域である50フェムト秒での異性化反応の追跡に成功し、論文として報告した。また、芳香族アミノ酸やタンパク質2次構造の変化にも成功している。さらには、数十億年の間に起こった分子進化についても様々な知見を得て、既に複数の原著論文として報告している。 このように、当初の計画以上に研究が進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、様々な手法を駆使して、時空間分解の限界に挑戦する。具体的には、 [1] 空間領域: これまで成果があがっているNMR分光法と振動分光法を軸に、最終年度は、様々な原子団を同時に捉えることの出来るX線結晶構造解析にも力を入れる。また、反応遷移状態の高分解能測定にも力を入れる。既に、結晶化に適した好熱菌由来の安定な分子の取得に成功し【Tsukamoto et al., 2013, J. Biol. Chem.】、結晶化にも成功している。良好な回折パターンも得られており、順調に進んでいる。 [2]時間領域では、サブフェムト秒レーザー(NOPA)を用いて、光センサー分子の変化を捉えつつある。吸収・蛍光による解析よりも、官能基の変化が捉えられるため得られる情報量が多い。異性化反応(~100フェムト秒)をリアルタイムで捉え、反応の根本原理の解明を目指したい
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Color discriminating retinal configurations of sensory rhodopsin I by photo-irradiation solid state NMR spectroscopy2014
Author(s)
Yomoda, H., Makino, Y., Tomonaga, Y., Hidaka, T., *Kawamura, I., Okitsu, T., Wada, A., *Sudo Y., & Naito, A.
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Journal Title
Angew. Chem. Int. Ed.
Volume: 未定
Pages: 未定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The early steps in the photocycle of a photosensor protein sensory rhodopsin I from Salinibacter ruber2014
Author(s)
*Sudo, Y., Mizuno, M., Wei, Z., Takeuchi, S., *Tahara, T., & *Mizutani, Y.
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Journal Title
J. Phys. Chem. B
Volume: 118
Pages: 1510-1518
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A blue-shifted light-driven proton pump for neural silencing2013
Author(s)
*Sudo, Y., Okazaki, A., Ono, H., Yagasaki, J., Sugo, S., Kamiya, M., Reissig, L., Inoue, K., Ihara, K., Kandori, H., Takagi, S., & Hayashi, S.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 288
Pages: 20624-20632
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Large spectral change due to amide modes of a β-sheet upon the formation of an early photointermediate of middle rhodopsin2013
Author(s)
*Furutani, Y., Okitsu, T., Reissig, L., Mizuno, M., Homma, M., Wada, A., Mizutani, Y., & *Sudo, Y.
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Journal Title
J. Phys. Chem. B
Volume: 117
Pages: 3449-3458
DOI
Peer Reviewed
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