2011 Fiscal Year Annual Research Report
放射光真空紫外円二色性による蛋白質精密構造解析の新展開
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23687020
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松尾 光一 広島大学, 放射光科学研究センター, 特任助教 (40403620)
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Keywords | 放射光 / 真空紫外 / 円二色性 / 蛋白質 / アルコール変性 / ジスルフィド結合 / 励起子相互作用 / 二次構造 |
Research Abstract |
放射光を利用した真空紫外円二色性(VUVCD)分光法により,蛋白質二次構造の含量・本数・配列解析(VUVCD-NN法)が可能である。本年度は,本手法の高度化に向けて,(1)蛋白質VUVCDスペクトルのデータベースの拡張,(2)芳香族残基励起子相互作用のVUVCD研究を行うと共に,本手法を用いて(3)アルコール変性蛋白質の構造解析を行った。 (1)蛋白質VUVCDスペクトルのデータベースの拡張 8種の構造既知β-rich蛋白質のVUVCDスペクトル測定を行った。既存のデータベースに組み込み,VUVCD解析による蛋白質二次構造の含量と本数予測の評価を行った。 (2)芳香族残基励起子相互作用のVUVCD研究 芳香族残基間に励起子相互作用を持つDihydrofolate reductaseの芳香族残基変異体のVUVCDスペクトル解析から,真空紫外領域で励起子相互作用に起因される新たな特性ピークの存在を明らかにした。 VUVCD分光法は,蛋白質の種類に制限が無く,様々な実験条件に対応できるため,これまで未解明であった蛋白質の精密構造解析に有効となっている。上記の研究成果は,この解析法の高度化に寄与する点で意義がある。 (3)アルコール変性蛋白質の構造解析 変性蛋白質の構造特異性は,酵素である蛋白質の巻戻り・構造安定性・アミロイド線維形成のメカニズムを解明する上で重要である。トリフルオロエタノール及びメタノール存在下での6種の蛋白質VUVCDスペクトルをVUVCD-NN法で解析し,アルコール変性に対するジスルフィド(SS)結合の寄与を調査した。その結果,SS結合はアルコール変性で観測されるα-helix構造の形成(含量や長さの増加)を強く阻害することが分かった。しかし,SS結合に関係するシステイン残基の多くはα-helix上に位置したので,蛋白質全体のflexibilityの減少がα-helix構造形成を阻害したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.データベースの拡張が終了すると共に,励起子相互作用を持つ蛋白質のVUVCDスペクトル解析が進んでいるため。2.蛋白質二次構造の位置決定法の高度化が進行中であるため。3.VUVCD分光法を変性蛋白質の構造解析に応用でき,変性構造に対する新たな知見を得ることができたため。以上のことより,おおむね順調に進展していると判断した。(尚,本研究課題は平成23年度11月18日から開始した。)
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,VUVCD分光法の高度化(蛋白質二次構造の位置決定)を,バイオインフォマティクス技術等の計算科学的手法を取り入れることにより推進する。また,新規に導入した計算機(ワークステーション)を用いた分子動力学による蛋白質構造のシミュレーション及び,VUVCD理論を用いたスペクトルの計算により,蛋白質の精密構造解析法の開発を進める。
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Research Products
(5 results)