2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23688020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 継之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (90533993)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | セルロース / ナノファイバー / 自己組織化 / ゲル |
Research Abstract |
地球上で最も豊富な生物素材は、セルロースである。セルロースは、樹木等の支持成分として細胞壁に蓄積しており、幅約3ナノメートルのフィブリル状のナノ構造体を形成している。セルロースナノフィブリルは、高アスペクト比、高弾性率、低熱膨張率、高比表面積等の優れた特性を有するため、近年材料科学分野で世界的な注目を集めている。本研究では、水中に分散したセルロースナノフィブリルが自己配列して液晶性を示すことに着目した。この液晶性分散液の濃度やpH、乾燥工程等を制御することにより、分散ナノフィブリルの自己配列様式を固定化または圧密化した精緻な高次構造体を形成することができる(研究代表者ら, 英国王立化学会誌 Soft Matter, 2011年発表)。そこで本研究では、このセルロースナノフィブリルの高次構造体を、既存の人工材料を超えた機能・性能を有する新規バイオベース材料へと展開することを目的とした。本年度は、ナノフィブリル分散液からエアロゲル(ナノ多孔材)を調製する検討に注力した。分散液をpH制御によりゲル化し、溶媒置換を経て超臨界点乾燥したところ、高い光透過性を示すエアロゲルを調製することができた。一部のシリカゲルを除き、通常エアロゲルは不透明である。この透明なエアロゲルは、0.01 g/cm3以下の超低密度でありながら、500 m2/g以上の大比表面積を有していた。また、圧縮試験をしたところ、20%以下の低歪み領域で弾性を示し、降伏点以降も破壊することなく歪み、70%以上の高歪み領域では硬化する現象(歪み硬化性)を示した。つまり、本研究で調製したエアロゲルは「機械的エネルギーを吸収し、高い歪みをかけても破壊しない」という特徴的な機械特性を有する。対照的に、シリカや炭素のエアロゲルは、機械的に脆く、低歪みで破壊してしまう。次年度は、このエアロゲルの断熱性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した本年度の計画は、滞ることなく進展し、非常に良好な結果が得られた。次年度以降の検討に期待の持てる成果であり、計画当初には想定していなかった新たな研究展開が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、セルロースナノフィブリルの水分散液からエアロゲル(ナノ多孔材)を調製するプロセスを確立した。次年度は、このエアロゲルの熱伝導率を中心に評価を進め、断熱材としてのポテンシャルを明らかにする予定である。
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Research Products
(20 results)