2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規薬効標的分子の探索を目指した尿酸の全身動態モデルの構築
Project/Area Number |
23689008
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 龍平 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90376468)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 薬理学 / 生理学 / ゲノム / トランスレーショナルリサーチ / トランスポーター |
Research Abstract |
近年、多くの血清尿酸値の個人差規定因子が見出されたが、痛風の主要な病因遺伝子である尿酸排出ポンプBCRP/ABCG2を含め、その尿酸動態制御機構については未解明のままであった。本研究は、ゲノムワイド関連解析やマイクロアレイ解析などで見出される尿酸トランスポーター候補分子の生理機能を明らかにし、尿酸の全身動態モデルを構築すること、および、構築されたモデルを用いて新規尿酸動態制御薬の薬効標的分子を探索することを目的としている。 研究開始二年目にあたる本年度(平成24年度)には、BCRPの機能低下により血清尿酸値上昇が生じる機序に関する研究を進めた。 尿酸代謝酵素ウリカーゼを欠損しているヒトの尿酸代謝を模倣するため、野生型およびbcrpノックアウトマウスにウリカーゼ阻害剤を投与し、実験に用いた。尿酸動態を詳細に調べた結果、bcrpノックアウトマウスにおいては野生型マウスと比べ血清尿酸値・尿中尿酸排泄が上昇しており、この傾向はBCRPの尿酸輸送能別に分類した高尿酸血症患者でも同様であった。一方、bcrpノックアウトマウスにおける腸管への尿酸排泄は野生型マウスの半分以下であり、各組織からの尿酸排泄量を定量的に比較した結果、bcrpノックアウトマウスにおける血清尿酸値の上昇は腸管からの尿酸排泄低下により説明しうると考えられた。さらに、ヒト検体を用いた解析により、BCRPの尿酸輸送能の低下が従来の分類でいう”産生過剰型”高尿酸血症をもたらすことが示された。これらの結果から、尿中への尿酸排泄を基準にした従来の高尿酸血症の病型分類では”産生過剰型”に分類されていた高尿酸血症患者のなかに、BCRPの機能低下に伴う腎臓以外(腸管)からの尿酸排泄低下による高尿酸血症患者が含まれていることがわかり、新たな分類として「”腎外排泄低下型”高尿酸血症」を提唱することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BCRP/ABCG2は尿酸排泄トランスポーターであり、日本人に高頻度にみられる機能低下型のBCRP遺伝子多型をもつ人は血清尿酸値および痛風発症リスクが高いことが知られていたが、BCRPが生理的に尿酸輸送を担う臓器・BCRP機能低下による血清尿酸値上昇のメカニズムは不明であった。本研究課題の進展により、BCRPが腸からの尿酸排泄に関与していること、BCRPによる尿酸輸送能の低下が、新たな分類としての”腎外排泄低下型”高尿酸血症をもたらすことを明らかにすることができた。この成果は、BCRPの機能亢進が腸管への尿酸排泄促進をもたらすという、本研究課題の目的である新規尿酸動態制御薬の薬効標的分子としての可能性を示したのみならず、腸管からの排泄低下が高尿酸血症の主要な原因の一つであり、従来の分類に「”腎外排泄低下型”高尿酸血症」を加えた新たな病型分類を提案するなど、基礎的にも臨床的にもきわめて重要な知見であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究三年度目となる次年度(平成25年度)には、一年度目・二年度目の研究により見出されたABCG2機能低下による血清尿酸値上昇の機序解明に引き続き、ヒト尿酸代謝モデルマウスを用いて他の血清尿酸値制御因子群の尿酸動態における生理的役割を解明する。そして、尿酸動態モデルの構築および新規尿酸動態制御薬の薬効標的分子の探索を目指し、さらなる検討を進める。
|