2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本人における尿中殺虫剤代謝物レベル基本特性の包括的理解
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23689034
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上山 純 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00397465)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 尿中殺虫剤代謝物 |
Research Abstract |
平成24年度は尿中殺虫剤代謝物類の高感度分析法開発、新規小児尿サンプルの回収、既存サンプルを用いた尿中殺虫剤代謝物の測定を行い、以下の結果を得た。 1)近年使用が増加しているネオニコチノイド系殺虫剤の尿中代謝物である6-chloronicotinic acid (6CN)、2-chloro-1,3-thiazole-5-carboxylic acid (2CTCA)および 3-furoic acid (3FA)の測定法を開発し、農業従事者を対象としてネオニコチノイド系殺虫剤曝露モニタリングを行った。また、一般生活者集団にも本測定法は応用可能であることを明らかにしている。本成果は現在国際雑誌に投稿中である。 2)自治体で実施している3歳児を利用して夏と冬に尿採取とアンケートを実施した。計350検体程度を回収しており、平成25年度に代謝物測定を実施する予定である。アンケート調査結果と解析することで、殺虫剤の曝露経路推定を試みる。予備的に尿中有機リン系殺虫剤代謝物をモニタリングした結果、有機リン系殺虫剤の曝露は冬より夏に高いレベルを示すことを観察できている。 3)リンゴ農家および殺虫剤撒布職域従事者から得られた、尿サンプル約400検体について尿中ピレスロイド系殺虫剤代謝物をモニタリングした。その結果、3群間におけるピレスロイド系殺虫剤の曝露レベルの違いが明らかとなり、その値には季節変動や家庭内における蚊取り線香などの使用状況が反映されることが示唆された。特に蚊取り線香類の尿中代謝物であるChrysanthemumdicarboxylic acidと蚊取り線香の使用状況の関係について明らかにしたのは本研究が初めてである。 4)ドイツ環境省を協力し、尿中ピレスロイド系および有機リン系殺虫剤代謝物測定値のクロスバリデーションを行い、良好な結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオニコチノイド系殺虫剤および有機リン系殺虫剤の尿中代謝物高感度測定法を順調に確立できたことは、本研究の目標達成に向けて大きな功績となっている。これらの測定法は現在国際雑誌へ投稿中であり、本研究領域において貢献度の高い成果を上げている。小児のサンプル採取について、当初の予定に比べて対象年齢が限局されているが引き続きサンプル採取を継続する予定である。尿中代謝物類の国際比較を行うために、中国人妊婦約100名から尿サンプルを採取済であり、日本人妊婦と比較予定である。海外ラボとの測定データのクロスバリデーションの結果が良好であったことから、測定法の修正や大幅は補正係数を算出する必要がなく、平成25年度は測定法の大きな修正を行う必要がない。
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Strategy for Future Research Activity |
回収した尿サンプルから殺虫剤代謝物類を測定する予定であるが、サンプル量の不足により測定できない項目もある。このことから各種尿中殺虫剤代謝物類測定法を統合し、効率的に少量のサンプルから多くの測定項目を分析する必要がある。これまで液液抽出で行っていた尿サンプル前処理方法を固相抽出カラムを用いて各種フラクションに分割し、各測定項目に応じて誘導体化および分離分析機器を選択させることで解決する。各種尿中代謝物類量とアンケート結果を統計学的に解析し、殺虫剤の曝露経路を予備的に推定する。小児の蓄尿を採取し、代謝物類排泄の日内変動を明らかにし、またクレアチニン補正方法に変わる物質の検索をオミクス解析にて実施する。また、京都大学医学研究科環境衛生学分野 生体試料バンクを利用し、尿中殺虫剤代謝物類のプロファイルの経年変化を観察し、殺虫剤使用あるいは生産等に関する各種データベースと比較・検討し、曝露経路の推定を試みる。
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