2012 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌の新規治療法の開発を目指したLINE-1メチル化レベルの網羅的解析
Project/Area Number |
23689061
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
馬場 祥史 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20599708)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | LINE-1 / エピジェネティクス / メチル化 / 食道癌 / 予後因子 / pyrosequence |
Research Abstract |
前年度までにLINE-1低メチル化食道癌は予後不良であることを明らかにし、『Annals of Surgery』に今年度に掲載された。今年度はそのメカニズムを解明するための研究を推進した。LINE-1メチル化レベルはゲノム全体のメチル化レベルの指標であるので、LINE-1低メチル化症例においてはゲノム全体のメチルレベルが低いことになり、ゲノム全体が低メチル化になると、ゲノム不安定性に繋がることが報告されている。我々はLINE-1低メチル化症例ではゲノム不安定性からDNAコピー数の異常をきたし、癌の悪性度に繋がるのではないかとの仮説をたて、LINE-1低メチル化症例3例とLINE-1高メチル化症例3例をCGH arrayにて解析した。すると、LINE-1高メチル化症例ではほとんどコピー数の異常をきたしていないのに対し、LINE-1低メチル化症例ではゲノム全体にわたり広範囲コピー数の異常をきたしていることが分かった(P=0.0047)。 また、我々はepigenetic field defectの観点から、正常食道上皮におけるLINE-1メチル化レベルに関して食道癌のリスク因子(喫煙、飲酒)との関係を検討した。食道癌症例非癌部のメチル化レベルは、食道癌を有さない剖検例の食道上皮(n=20)よりも低値で (P = 0.017) 、“Epigenetic Field Defect”の概念を支持した。非癌部のメチル化レベルは喫煙歴と相関し (Brinkman Index :p=0.0002)、アルコールや年齢とは相関しなかった。正常食道上皮の低メチル化は、喫煙を誘因とするEpigenetic Field Defectのsurrogate markerの1つとなりうるかもしれない。LINE-1は、食道癌の “浸潤転移”だけでなく“発生”においても重要な役割を果たしていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記した予定通りに研究は遂行され、意義深い結果が得られた。これらの結果は、Annals of Surgery、Annals of Surgical Oncologyという外科分野の一流誌に既に採択されている。また、そのメカニズム解明においても興味深い結果が得られており、来年度以降の研究の進展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
LINE-1メチル化レベルとDNAコピー数以上に関する興味深い結果が得られており、その結果のさらなる検証をすすめる。FISH、cDNA arrayなどを用いて具体的にどのような癌関連遺伝子のコピー数異常がおこっているかを検討する。また、そのコピー数異常と食道癌予後との関連も検討する。
|