2011 Fiscal Year Annual Research Report
体外肺潅流技術を用いた、傷害のあるドナー肺の評価とその治療への挑戦
Project/Area Number |
23689063
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
陳 豊史 京都大学, 医学研究科, 助教 (00452334)
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Keywords | ドナー肺 / 傷害肺 |
Research Abstract |
肺移植におけるドナー不足を解消する現実策として、マージナルドナー肺や心臓死ドナー肺といった「傷害を受けた、または潜在的に傷害のある可能性がある」ドナー肺の積極的な利用が重要である。このような、いわば「傷害のあるドナー肺」の安全な利用のためには、ドナー肺の質を移植前に客観的に評価する必要がある。そこで、申請者はこれまでの準備に基づき、小動物を用いた基礎実験を続ける傍ら、(1)中大動物を用いた体外循環回路(EVLP)を用いて、「傷害のあるドナー肺」の機能を移植前に正確に評価するシステムを構築し、(2)EVLP中の薬剤投与など、肺傷害を軽減する手法を開発することで、「傷害のあるドナー肺を治療し、いわば蘇生させる」ことを検討する。 われわれは、平成23年度の実験計画として、イヌ傷害肺モデル(脳死ドナー肺、マージナルドナー肺、controlled DCDドナー肺の3モデル)の確立を掲げて実験を開始した。Sham群となる脳死ドナー肺モデルについては、実験手技の確認として行った。マージナルドナーモデルについては、急速輸液による肺水腫モデルであるが、再現可能であることを確認した。現在世界的に行われている安楽死モデルであるcontrolled DCDドナーモデルは、実臨床で、人工呼吸器の接続を外した後に心停止に至るまでの時間の重要性が認識され始めていることを鑑み、その時間設定に重点を置き実験した。まず、小動物(ラット)を用いた予備実験にて、低換気持続時間が心停止時間に及ぼす影響と肺障害について一定の知見が得られたので、今後、中大動物実験に移行する予定である。 EVLPでの評価については、脳死ドナー肺、マージナルドナー肺モデルにおいて、EVLPのデータを取得した。これまでに、EVLPによって肺障害が軽減するようなデータを得ているため、その効果が肺移植後にも持続するのか、検討を続ける。なお、肺内エネルギー測定、アポトーシス、遺伝子発現などの測定も、並行して適宜行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において、当初の予定通り、3種類の傷害肺モデルの確立をほぼ行いえた。さらに、EVLPおよびその後の肺移植による検討については、2種類の傷害肺モデルではほぼ順調に実験が進んでいる。しかしながら、DCDドナーモデルにおいては、実臨床での課題である、心停止までの時間と肺障害についての検討の必要性が生じたため、小動物を用いた予備実験を行っている。これによって、中大動物における設定が整うと、EVLPおよび肺移植実験が可能となるので、おおよその目途は立っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在、予備実験として行っているDCDドナーモデルにおける心停止時間と肺障害の結果を小動物EVLPで詳細に検討する。この結果を用いて中大動物の設定を決定し、EVLPおよび肺移植実験を行う。その後、平成24年度の計画に進むが、平成24年度は、23年度の実験の進み具合に余裕を持たせるために、事前に平成23年度の群からEVLPを省いた群を行う予定にしているため、各々の群において、EVLPの有無についての移植前後の肺機能の差を検討する。また、平成25年度で行う予定の吸入薬による肺障害の改善の検討を行うための予備実験も適宜行っていく予定である。
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