2012 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚潰瘍に存在する間葉系細胞からの表皮誘導法の開発
Project/Area Number |
23689073
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
栗田 昌和 杏林大学, 医学部, 助教 (20424111)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 直接転換 / 線維芽細胞 / リプログラミング / 間葉上皮転換 / ケラチノサイト / 遺伝子導入 / マイクロRNA |
Research Abstract |
本研究は、皮膚潰瘍局所に存在する間葉系細胞のケラチノサイトへの分化を誘導し、潰瘍面から直接的に上皮化を起こさせる新しい創傷治療の方法の開発を目的としている。ケラチノサイト特異的micro RNAを明らかにし、これを用いて間葉系細胞からケラチノサイトへのダイレクトリプログラミングを試みる方針で、同一皮膚サンプルから確立した3組の初代培養ケラチノサイトおよび皮膚線維芽細胞の発現マイクロRNAをアレイを用いて網羅的に調べ、ケラチノサイト特異的micro RNA(mir200a/200b/200c、mir203、mir205など)17種および線維芽細胞特異的micro RNA(mir199, mir145など)9種類を同定した。レンチウイルスベクターを用いて、ヒト初代線維芽細胞において、ケラチノサイト特異的micro RNAの過剰発現、線維芽細胞特異的micro RNAのノックダウンを行った。ケラチノサイト特異的micro RNAの発現によりE-cadhelinの上昇、線維芽細胞特異的micro RNAのノックダウンにより、cytokeratin14の減少を認めた。線維芽細胞における特異的micro RNAの操作により、機能的、表現型上ケラチノサイト類似の性質を獲得することができたが、ケラチノサイトの重要な性質のひとつである「特異的培養環境下における自己整復能」の獲得には至らなかった。報告書作成時現在、直接転換のより強力な誘導のため、ケラチノサイト特異的な転写因子の同定を行い、レンチウイルスによる線維芽細胞への導入を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、マイクロアレイによるケラチノサイト、線維芽細胞それぞれに特異的なマイクロRNAの導入、レンチウイルスベクターを用いたマイクロRNAの導入など、計画した事項については順調に遂行することができている。最終的な目的である線維芽細胞からケラチノサイトへの直接転換の達成には至っていないが、ある程度目標としてのレベルが高いことは想定ずみであり、研究達成のためのツールが備わってきていることを考慮にいれ、おおむね順調に進展している、としてよいと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在までに用いることができるようになった実験手技を活用して、マイクロRNAのみではなく、細胞種に特異的な転写因子を用いて、直接転換を惹起するように図っていく。特にケラチノサイト特異的転写因子については、現在までにGATA3, LGAL7B, KLF5など10種類を、過去のマイクロアレイデータベースおよび、文献的検索により絞り込んでいる。さらに、これと並行して、最新のマイクロアレイチップでケラチノサイトおよび線維芽細胞に特異的な転写因子およびそのアップストリーム解析を行い、さらなる候補遺伝子の選択を進めていく予定である。キーとなる遺伝子が導入された時点で直接転換が達成されるものと考えられるため、因子選択の門戸を広く構え、研究を推進していく。
|