Project/Area Number |
23700125
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
光藤 雄一 北九州市立大学, 基盤教育センター, 助教 (70404803)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度は主に同期反転信号の変復調/符号復号化手法の提示と,コンピュータシミュレーションによる検証を行った. 提案したシステムの構造では,受信器の備える二つの受光器から受信信号が出力される.二つの受光器には所望信号と非所望信号が混合して入射しており,出力はその和である.変復調機構は,この信号の中から所望信号だけを復調しなければならない.ここで,所望信号だけが備える特徴とは,二つの受光器に互いに反転した信号が入射しているということである.復調機構はこの特徴を手がかりに復調する.この特徴は,2つの受光器から出力される信号のうち,所望信号同士の相互相関は常に負の値をとるということである.一方,非所望信号同士は独立した情報源から出力されているので,相互相関の時間的平均は0に近づく. そこで,本年度は各送信器からの送信信号に,各送信器間で相互相関が低くなるように設計された拡散符号を乗じて出力する手法を考案した.この信号を受信している受信器の二つの受光器の出力を,HPFに通してから乗ずると,所望信号の送信信号の正負が逆転したものが出力され,非所望信号は長期平均が0の信号として出力される. 前年度までのシミュレーション結果から,多くの使用環境では,非所望信号の振幅は所望信号の振幅より大きくならない.この環境下で通信を行った際に,どの程度の符号誤り率を達成することができるかを,シミュレーションで評価した.適切な誤り訂正符号を用いた場合,受光器の両側から,所望信号の振幅の6割程度の振幅の非所望信号を加えた場合であっても,10の-4乗以下程度の誤り率で通信を行うことができることが確認された. 考案した方法は,多元接続環境下での低い誤り率での通信を可能にしたとともに,拡散符号を送受信側で共有しないで行うCDMA通信を提案したと考えることもでき,高速な実世界情報配信環境の構築に寄与したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,拡散符号を用いた信号の拡散と,同期反転信号の2つの信号の乗算による復調方法を提案した.この方法は大きな効果を発揮し,当初予想していたよりも低い誤り率での通信が可能であることが確かめられた.また当初予想していなかったような悪条件下でも,十分な通信品質を保てることが確かめられた.ある特定の条件下では通信品質が低下するものの,この条件を現実の環境に読み替えて考えると,デザイン上無理のあるレイアウトになるので,無視することができると考えられる. この研究成果は,システムの他の部分の構成にも大きな影響を与えた.本システムは多元接続環境での通信を前提とし,光学的な条件により,非所望信号が相殺され,結果的に所望信号だけが生き残る仕組みによって,信号の選択を行っている.このプロセスは,信号群が受光器に入射する前に,光学的に発生する.非所望信号の相殺は光学的,幾何学的な条件によって発生するので,一定の条件では,非所望信号の振幅が充分に小さくならない.このため,通信を行う為にやや厳密に光学的な条件を整える必要があると予想しており,ユーザビリティの低下が生じると予想していた. しかし,本年度,変復調方式を工夫することで,非所望信号の電力が大きい場合であっても,所望信号のみを復調できることが確認された.この結果,それほど厳密に光学条件を設定する必要がなくなり,より多様な環境でこのシステムを稼働させることができるようになった. また,提案した手法そのものも,拡散符号を送受信側で共有しないでも通信ができる通信手法,という特徴を持つため,この手法から新たなシステム群を展開できる可能性がある. 一方でこの変復調手法に大きなインパクトがあったため,実装による検証は後回しになっている.全体として,変復調手法が通信品質の鍵を握るので,この点に重点を置いて研究を進めた判断は適切であったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】で書いたように,本年度担当分の変復調手法だけで,システムに対する要求の大部分をカバーする結果を得ることができた.このことは,受光器の前段階の光学設計に余裕をもたらしたと考えることもでき,ある程度設計の自由度が高まった. 現在まで,光学系はピンホールによる単純な光学系を想定していたが,ピンホールカメラでは,本システムで求められる広画角を実現する事が困難である.そこで,光学系にレンズを含める事が必要になる.本年度はこのレンズ系の設計を行う. レンズを用いた光学系の設計は複雑な工程が必要になるが,専用の光学系の設計ソフトウェアも市販されており,ある程度自動的に行うこともできる.平成25年度は,CODEV(光学系設計ソフト)を用いて,幾つかの受光光学系を設計する.本システムの受光光学系は,受光器の受光面に結像する光学系があれば要求を満たす.しかし,本システムは映像を取得するわけではないので,画角全域にわたる結像は必要なく,単一波長で通信を行うので,収差の補正も一部省略できるなど,一部条件を緩和することができる.一方で,画角が広い方が有利であることや,受光面の中心(境界線)付近(近軸)では,結像していたほうがシステムの精度が高くなるなど,システム特有の要求もある.さらに,広角レンズでは,周辺光量が低くなるが,信号処理場は,周辺光量の低下が存在しない方が望ましいなど,特有の要求もある. こうした要件を満たす光学系は,市販のもので考えればカメラレンズであるが,前半で述べたように一部要件が緩和されるので,小型化につなげることができると予想される.このような要件を満たす光学系を具体的に設計してソフトウェア上で光量の分布シミュレーションを実施し,どのような通信品質やユーザビリティが得られるかを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予算は,CODEVの使用料および,通信シミュレーション用のソフトウェアMATLABのメンテナンス料,論文の出版費用,および,システム関係の調整費用(PCのメモリ増設等)に費やされる予定である.
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