2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700125
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
光藤 雄一 北九州市立大学, グローバル人材育成推進室, 特任准教授 (70404803)
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Keywords | 光空間通信 / 光線追跡法 / モンテカルロ光線追跡法 |
Research Abstract |
本年度は,受信器の光学系による受信信号電力の変化の評価および,受信信号電力と変復調/符号複合化方式と通信品質の関係の評価を,それぞれモンテカルロ光線追跡法および,数値シミュレーションによって実施した. 本研究では2つの発光器から受信器に入射する光空間信号が,受光器の2つの象限に別々に,あるいは一緒に入射するということが最も重要なポイントである.本年度までの研究は,受信器の光学系を理想的なものと考え,光学系に入射した放射束は受光器の一点に収束し,受光面は,2つの別々の点に収束した光束を必ず弁別できるものとしていた.しかしこの想定は実際のレンズ系には適用できない.受光面に達するのは入射した放射束の一部分で,収束する場所も一点にはならず,一定の範囲となる(錯乱円).また多象限受光器では,2つの象限がある程度の間隔をもって隔てられたり,移行帯をもつものが多い.間隙や移行帯と錯乱円が重なることは避けるべきで,そのため,ある光学系には,2つの点光源を異なる象限に分解しうる最小の角度が存在する(分解能).分解能を求めるためには,入射光線群の受光面における入射位置を調べる必要がある.複数のレンズで構成される光学系を考えた場合,光線追跡によって調査を行うのが一般的である.本年度は,実際のレンズの数値モデルを用いて光線追跡を行い,受信器の分解能を調べた.またモンテカルロ法と光線追跡を組み合わせて入射した放射束を算定する,モンテカルロ光線追跡法を用いて,この光学系における入射放射束を算定した.この数値モデルを用いて,さまざまな使用状況で発光器の分解能や入射放射束がどのように変化するのか評価を行った.この結果を昨年度行った変調系の評価実験と組み合わせることで,実際的な環境における受信器の振る舞いを算定できるようになり,ユーザビリティの評価もある程度行うことができるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は提案した通信器の光学系について,諸元が公開されているパテントレンズの数理モデルを用い,モンテカルロ光線追跡法を用いて振る舞いを観察し,本研究で主張した信号処理方式での使用に堪えるかどうかを評価した.従来提示していた手法は,光学系の中心に近い場合に近似的に用いることができるが,入射角が大きくなるにつれて誤差が大きくなる.特に本システムが使用される状況では,入射角が大きいことが一般的と考えられることから,このケースに対応できる計算手法が必要である.光学系の振る舞いを評価する方法として計算機によるシミュレーションを選択したのは以下のような事情からである.市販されているビデオカメラ用のレンズ等を使用し,実験的に光学系の振る舞いを観察することは可能であるが,市販のレンズは内部のレンズの諸元が公表されておらず,結果を正確に評価することは難しい.逆に評価用にレンズ系を設計することもできるが,本研究で求めるような,広視野角で結像するレンズは構造が複雑で,そのような光学系の設計/実装に労力を使うのは本研究の旨とするところではない.このため,既に公開されているパテントレンズの一つをモデルとして使用し,モンテカルロ光線追跡法によって光学系の振る舞いを評価する手法を採用した. モンテカルロ光線追跡法を採用したことにより,入射放射束とともに錯乱円の大きさを求められるようになり,光学系の分解能を評価することができるようになった.これは識別できるタグの最少視角を求めることができるようになったということを意味する.このため,通信品質の評価とともに,ある程度ユーザビリティの評価を行うこともできるようになった. 本年度の結果と,昨年度-本年度に実施された変調系の通信品質評価の結果を組み合わせることで,現実的な構成におけるシステム全体の振る舞いを一定の精度で調べることができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間中,予算および勤務状況の変化から,実装による実証実験が困難になり,数値モデルによる光学系/変復調系の手法の提案と評価を主として研究を進行した.数値モデルによる評価であるため,実装の手間を要さず様々な光学系,変復調方式を提案し,試行することができるようになった.現時点で,光学系について1件,変復調系について1件の,計2件の論文の投稿/再投稿を予定しており,論文執筆と修正を進めている.これらの論文のうち,光学系についてはレンズ以外の光学素子を用いた方法を着想しており,将来的に論文化する予定である.また,変復調系については,変復調/符号復号化方法について複数の組み合わせが考えられる.今回はそのうちの一つについて評価を行い,論文とした.他の組み合わせについて,さらに複数の論文を執筆することが可能と考えられるので,本年度-来年度に掛けて執筆/投稿を行う.また着手の遅れている実装による実証実験を実施する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度中に投稿した論文が,年度内に掲載にいたらなかったため. 論文投稿費用および,関連ソフトウェア保守費用に使用
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