2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 美里 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 比較認知発達 / 物の操作 / 道具使用 / チンパンジー / ボノボ / オランウータン |
Research Abstract |
チンパンジーとヒトを対象におこなってきた、物の操作を指標とした一連の認知発達課題をさらに発展させることで、ヒトを含む霊長類の比較認知発達スケールとして確立することを目的として研究をおこなった。非言語性の課題を直接対面場面で実施することで、ヒトとヒト以外の霊長類を同一の尺度で比較することができる。物にかかわる知性について、物理的な特性の理解に加え、社会的要因まで含めて多角的に検証をおこなう。健常児以外のヒトの子どもにも課題の適用範囲を広げるため、予備的な療育活動の観察をおこなった。飼育下のチンパンジーだけでなく、アフリカにおける野生チンパンジーの長期調査への関与を継続するとともに、コンゴ民主共和国にすむ野生ボノボについても調査を実施した。チンパンジーとボノボは同じパン属であるにもかかわらず、道具使用行動や社会的行動において大きな種差が見られ、ヒトの進化の要因を探るうえで非常に示唆に富んでいる。飼育下のボノボを対象とした物の操作の発達についての研究経験はあったが、今回初めて野生ボノボを観察することで、チンパンジーとの行動の違いや生態・環境の違いについて多くの興味深い知見を得ることができた。調査中に観察した罠にかかった動物に対するボノボの行動について、チンパンジーとの比較も含めて論文としてまとめ公表した。アジアにすむ大型類人猿であるオランウータンの野生復帰プロジェクトへの参与も継続し、自然環境下での母親による育児の観察などの行動・生態調査をおこなった。これで、大型類人猿の全4種について、飼育下と野外の双方で観察をおこなったことになる。ボノボもオランウータンも、チンパンジーと比べて基礎的な資料が圧倒的に少ないため、認知発達に関するデータを得ることで物の操作や道具使用の進化について多角的な検討をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チンパンジーを対象とした直接対面場面での課題の実施については、事故の発生をうけて現在中止している。安全性を確保したのちに再開する予定だが、並行して対面場面以外でも実施可能なように課題を改変して実施することを検討している。全体の進捗状況としては、チンパンジー以外を対象とした研究のほうを順調に進めているため、大きな問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
チンパンジーを対象とした研究については、対面場面以外での実施にむけた課題の改変と、直接対面場面を再開後の課題の新規導入も含めて、研究の進展をはかる。新しい大型ケージ設備が導入されたことを受け、それを活用した実験的研究や、空間利用や個体間距離に関する行動観察をおこなう。健常児以外のヒトの子どもについても比較可能な形で課題を実施することを目指し、関係機関との調整と倫理審査申請をおこない、課題の実施を開始する。飼育下で四肢麻痺を発症したチンパンジーの行動回復について国際学会での発表と論文としての公表を予定している。飼育下および野外でのチンパンジーの行動発達と母子関係の長期観察から得られた知見をまとめて公表する。マレーシアにおけるオランウータンの発達研究と母子観察を継続しておこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
チンパンジーおよびヒトを対象とした課題で使用する物品の購入を予定している。オランウータンの調査のための渡航と、国際霊長類学会への参加および発表のための渡航をおこなう。
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