2011 Fiscal Year Research-status Report
微小液滴内のDNA演算反応を利用した動的構成可能なオンチップ分子解析技術
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23700362
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 裕介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (20346191)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | DNAコンピュータ / 光ピンセット / 生体生命情報学 / システムオンチップ / 情報システム |
Research Abstract |
本年度は,分子系の処理手続きを動的に構成可能なオンチップの分子解析を実現するための基盤技術として,光プログラムが可能なDNA演算系の作製,および,ホログラフィック光ピンセットに基づく液体マイクロリアクタ並列操作システムの構築を行った.具体的には以下の成果が得られた. 1.光プログラム可能なDNA演算系の設計と作製 DNAを入出力とした二入力一出力のDNA論理ゲートを設計,作製した.設計したゲートは,演算指定用DNAの駆動を光で制御することにより,外部光信号による演算内容のプログラムを実現する.複数の演算指定DNAが並列に動作することを確認した.また,光により指定した演算が実行されることを実証した. 2.リポソームの並列マニピュレーションシステムの作製 分子解析システムの機能性や処理スループットを向上するため,インタラクティブなマイクロリアクタの並列操作システムを構築した.マイクロリアクタとしては直径数~10μmのリポソームを用いる.GPUを用いることで操作に必要な光パターンをリアルタイムに設計・生成することが可能となった.少なくとも16個のリポソームに対して自動整列や個別操作が行えることを実証した. 3.リポソームの選択的融合手法の開発 提案手法では,リポソームを融合することにより,それらが内包する対象分子や論理ゲートを混合し演算を実行することをめざしている.並列マニピュレーション法と電気刺激によるリポソーム融合法を組み合わせ,選択的に内包物を混合できることを示した.この成果は対象分子に対する処理手続きの動的構成に有効である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,解析対象となる分子系の処理手続きを動的に構成可能なオンチップの分子解析技術の開発を目的とする.これを実現するため,分子情報のその場取得や処理が可能なDNA計算技術と,分子反応空間としての液体マイクロリアクタの並列光操作技術を融合した方式について検討する.最終的には,分子情報解析システムの試作・検証を通じて本方式の潜在能力を示し,性能と実用化への課題を明らかにすることをめざしている. これまでに分子情報を扱う手法として,光とDNAを融合した新しい演算方式を考案した.この方式は光信号によって実行演算の切り換えが可能であり,本研究でめざす分子情報処理手続きの動的構成に有望である.複数の波長を使ったDNA反応系の実装などの課題は残っているが,反応系の基本動作や光による演算指定の原理についてはすでに確認している. 一方,液体マイクロリアクタの並列操作についても,インタラクティブかつリアルタイムな操作を提供するシステムをすでに構築し,その操作能力を確認している.ハイブリッド光学系による液滴の広範囲操作や,リポソームの選択的融合などに成功している.リポソームの内容物を見分ける方法が必要なため,多数のリポソームの操作に基づくオンチップ並列演算の実証には至っていないが,蛍光カラー符号により見分けられる手応えを得ており,大きな問題はないと思われる. 以上のように,オンチップの分子解析に必要な基盤技術を整備することができており,おおむね順調に進展している.当初の予定どおり,次年度は分子情報解析システムの試作と評価を行えると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した光プログラム可能なDNA演算技術と液体マイクロリアクタの並列操作技術を洗練して技術としての完成度を高めつつ,分子解析システムの試作と評価を行い本手法の有用性を示す. 処理手続きを動的に構成可能であるという本手法の特徴を活かすためには,液体マイクロリアクタ内の分子の状態を適切に検出する必要がある.そこで特定の分子状態を判定するための演算機能を有し,蛍光信号として外部への情報伝達が可能な補助DNA演算系を実現する.液体マイクロリアクタに含まれる分子は少なく高感度な検出を要求されるため,DNA触媒反応を応用したマイクロリアクタ内での分子増幅機構などを用いて十分な検出精度を確保する. 次に,光マニピュレーションシステムをベースに,光プログラムDNA演算系を制御する光学系を導入した実験システムを試作し,提案手法の評価を進める.解析対象の分子系としては遺伝子診断を想定する.液体マイクロリアクタの操作と光プログラムDNA演算に基づいて段階的に処理を進めることで特定の発現状態にある検体を見出す実験を行う.性能評価を通して本手法の特性を明らかにするとともに,生体分子解析の実用化にむけた課題を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定通りの計画を進めて行く. 物品費としては主に,レーザー光源,試薬薬品(カスタムDNAを含む),光学素子の追加・更新に使用する.また,国内学会で2回,国際会議で1回程度の成果発表を予定している.論文は2本程度を想定しており,別刷りや英文校正の費用としても使用する.
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