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2011 Fiscal Year Research-status Report

遺伝子改変マウスを用いたスパインにおけるアクチン制御因子の生理機能解析

Research Project

Project/Area Number 23700368
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

葛西 秀俊  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40403232)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords遺伝子操作マウス / Rac1 / Cdc42 / 神経細胞
Research Abstract

本年度は、遺伝子操作マウスの個体および脳スライスを用いて、脳および神経細胞の形態形成における低分子量Gタンパク質Rac1およびCdc42の役割について検討した。具体的にはまず、Rac1-floxマウスまたはCdc42-floxマウスをEmx1-Creマウスと交配することによって、大脳皮質や海馬においてRac1あるいはCdc42を欠損したマウスを作製した。これらのマウスの脳をゴルジ染色することによって、大脳皮質・海馬の神経細胞の形態を観察した。その結果、Rac1を欠損した神経細胞において、スパインの数の減少と形態の異常が観察された。一方、Cdc42欠損細胞においては、コントロールと比較して大きな違いは認められなかった。次に、Rac1-floxマウスまたはCdc42-floxマウスより海馬スライスを作製し、ジーンガンによってCre組換え酵素を遺伝子導入することによって、一部の神経細胞においてのみRac1あるいはCdc42をノックアウトした。この解析によって細胞自律的な各分子の機能を明らかにすることができる。海馬スライスを長期培養した結果、Rac1を欠損した神経細胞においてはスパインの形態が非常に細長く、未熟であった。一方、Cdc42を欠損した神経細胞は、コントロールと比較してスパインの数や形態に大きな違いは認められなかった。これらの結果より、Rac1はスパインの形成に重要な役割を担っていることが明らかになったと同時に、RhoファミリーGタンパク質間で神経細胞において機能的な相違があることが示唆された。Rac1の下流分子のPAKは精神遅滞の原因遺伝子であり、この疾患においてはスパインの減少や形態異常が引き起こされることがが知られている。このことから、本年度得られた成果は、疾患メカニズムを明らかにする上で科学的・社会的に重要であると考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

交付申請書に記載した研究計画は全て遂行することができたばかりでなく、期待以上の表現型を観察することができた。これらの結果は、ヒトの精神遅滞の症状と酷似しており、疾患メカニズムの解明に向けて、当初の計画以上に進展していると思われる。本年度はこれらの実験に加えて、さらに神経細胞の形態形成の分子メカニズムをつきつめてゆくために、Rac1を制御する因子についての研究にも着手することができた。具体的には、神経細胞におけるエネルギー代謝制御や細胞内小器官の局在制御などが、Rac1の制御に因果関係を持つのではないかと考えて研究を進めている。以上のことから、本年度は当初の計画以上に研究が進展し、実績を出すことができたと判断した。

Strategy for Future Research Activity

引き続きRac1のスパイン形成における役割の分子メカニズムについて研究を進める。これと同時に、本年度着手したRac1を制御する因子について下記の研究を行う。(1)大脳皮質におけるRac1変異マウスのプロテオーム解析大脳皮質においてRac1関連因子を網羅的に同定するために、終脳特異的Rac1欠損マウスとコントロールマウスとの間で、プロテオームおよびリン酸化プロテオームについて相対定量を行う。この解析によって、Rac1の欠損によって変動したシグナル伝達経路を同定し、神経細胞における役割を大脳皮質あるいは海馬スライスを用いて明らかにしたい。(2)神経細胞におけるエネルギー代謝制御の解析細胞内のエネルギー制御のハブであるmTORキナーゼは栄養状態に応じてタンパク質合成やタンパク質分解を調節するばかりでなく、下流に細胞骨格を制御する機能を持つ。さらにmTORシグナル経路の破綻が自閉症などの精神疾患を引き起こすことが知られている。栄養やエネルギーが脳の形成やその機能に与える影響は、社会的に高い関心と重要な問題をはらんでいるにも拘らず、未だにほとんど手つかずの分野である。このことから、個体および脳スライスレベルでmTORの機能を明らかにしていきたい。具体的には、活性化型mTOR変異体やノックダウンベクターを、胎児大脳皮質への子宮内エレクトロポレーションまたは海馬スライスへのジーンガンによるトランスフェクションによって導入し、神経細胞や樹状突起スパインの形態に与える影響について明らかにする。この実験によって、神経細胞内のエネルギー代謝が脳や神経細胞間のネットワーク構築に対して、どのように作用しているかを明らかにすることができる。さらに、mTORとRac1シグナルの関連性を明らかにすることによって、精神疾患のメカニズムについてより深い知見が得られると期待できる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

(1)次年度使用する研究費が生じた状況本年度は個体および脳スライスにおけるRac1・Cdc42の役割を検討したが、期待以上に早期に有意な表現型を観察できたため、これらの実験に使用する予定であった研究費の一部を次年度のRac1関連分子の同定やmTORキナーゼの解析に使用することとした。計画の一部変更によって次年度使用する研究費が生じたが、これによって神経細胞におけるRac1およびエネルギー代謝シグナルについてより多くの知見を得ることができると考えられる。(2)研究費の使用計画今後の研究の推進方策に掲げた実験を行うための研究費の使途は以下のとおりである。(1)遺伝子操作マウスおよび野生型マウスの飼育経費。(2)脳スライス培養に用いるプラスティック器具。(3)タンパク質発現ベクター・ノックダウンベクター作製のためのオリゴDNAおよび酵素・試薬類。(4)タンパク質発現・局在解析のための抗体。(5)研究成果発表のための国内および海外出張旅費。

  • Research Products

    (3 results)

All 2012 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Cdc42 is required for chondrogenesis and interdigital programmed cell death during limb development.2012

    • Author(s)
      Ryo Aizawa
    • Journal Title

      Mechanisms of Development

      Volume: - Pages: 掲載確定(印刷中)

    • DOI

      10.1016/j.mod.2012.02.002

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 大脳皮質形成におけるmTORシグナリングの機能解析2011

    • Author(s)
      葛西 秀俊
    • Organizer
      第34回 日本分子生物学会年会
    • Place of Presentation
      神奈川県・パシフィコ横浜
    • Year and Date
      2011年12月16日
  • [Book] The Enzymes, Protein Prenylation PART A2011

    • Author(s)
      Hidetoshi Kassai
    • Total Pages
      125-145
    • Publisher
      Elsevier

URL: 

Published: 2013-07-10  

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