2011 Fiscal Year Research-status Report
不安・気分障害関連遺伝子Slitrk5の機能解析と疾患発症メカニズムの解明
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23700457
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松本 圭史 独立行政法人理化学研究所, 行動発達障害研究チーム, 研究員 (60513463)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | SLITRKファミリー / 海馬 / シナプトジェネシス |
Research Abstract |
本研究は様々な精神神経疾患・神経発達障害の原因遺伝子として報告されているSlitrkファミリーの機能解析を行い、疾患発症のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。そのために当研究室で既に作成されているSlitrk5ノックアウトマウス(以下KOマウス)の行動解析や形態観察を行い、一方in vitroでは、神経突起・棘突起形成やシナプスにおける働きなど、神経細胞レベルでのSlitrk5の分子機能を解明する。これらin vivoとin vitroとの実験を有機的に結合させることにより、Slitrk5による精神神経疾患発症のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。これまでの結果によりSlitrk5は海馬に強く発現が見られている。またKOマウスにおいて海馬におけるセロトニン量が優位に低下していることが明らかになっている。そこで、KOマウスの海馬における神経活動を調べるために、電気生理学的解析を行った。その結果、KOマウスの海馬シナプスにおいてLTPの有意な上昇が見られた。このことはKOマウスにおける海馬シナプスが何らかの要因により幼若化している可能性が示唆され、現在その要因解明に取り組んでいるところである。さらに、in vitroにおけるSlitrk5の役割を明らかにするために、共同研究者とともに海馬におけるSlitrk5のシナプス誘導能を調べた。その結果、Slitrk5を含むSlitrkファミリーは全て、海馬の初代培養細胞においてシナプス誘導を引き起こすことが明らかとなり、上記電気生理実験の結果と合わせて、海馬におけるSlitrk5の機能解明を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究において最も重要だと考えらえる、Slitrk5の分子レベルでの機能解析に非常に時間がかかっているため、本年度の目標からやや遅れている。しかしながら、上記「研究実績の概要」においても述べたとおり、海馬における機能は明らかにされつつある。Slitrk5の機能を明確にすることにより、そのほかのSlitrkファミリーの機能、ひいては膜貫通タンパク質ファミリーの機能解明にも貢献できると考えられる。そのため、目標からは遅れているものの、じっくりと腰を据えて明らかにしていこうと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果により、Slitrk5のKOマウスは不安・鬱傾向の行動を示す。また上記「研究実績の概要」においても述べたとおり、Slitrk5の海馬における強い発現や海馬における電気生理学的異常やモノアミンの分泌異常はSlitrk5の行動異常を示す手がかりとなりつつある。さらにSlitr5の海馬初代培養細胞でのシナプス誘導能と考え合わせ、その分子機能を解明することを最大の方針としている。そのために、Slitrk5と相互作用するタンパク質を同定し、Slitrk5と相互作用しどのような挙動を示すことにより誘導能を示すのかを分子レベルで明らかにする。また、シナプス誘導能はSlitrk5だけではなくその他のSlitrkファミリーにおいても確認されており、それらファミリー間で相補的な関係がある可能性も考えられる。またSlitrk5は染色体上においてSlitrk1およびSlitrk6と近接しており、発現レベルでの相補性も十分に考えられる。そのためこれらSlitrkファミリーのマルチノックアウトマウスを作製し、行動等を解析することによりSlitrkファミリーの脳高次機能を明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はノックアウトマウスの維持やコントロールとして野生型マウスが必要である。また、マウスの行動解析の費用もかかる(約20~40万円)。さらに、Slitrkの組織染色実験のための抗体の購入(約20万円)や、Slitrkタンパク質を強制発現させるための培養細胞やその試薬、細胞培養用プレートに費用がかかる。さらにSlitrkと相互作用するタンパク質の機能解析のための試薬、細胞培養用プレートおよび抗体作成等に費用が必要である。平成23年度においては研究発表や共同研究先への訪問のために予定していた国内、海外旅費を使用しなかったため、約30万円の繰越金となった。また、謝金についても予定していたよりも少額で済んだため、約40万円の繰越金となった。平成24年度では、計画書にも記載してあるマルチノックアウトマウスの作製および表現型解析のためにこれらの金額を使用する予定である。
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[Journal Article] Selective control of inhibitory synapse development by Slitrk3-PTPδ trans-synaptic interaction.2012
Author(s)
Takahashi H, Katayama K, Sohya K, Miyamoto H, Prasad T, Matsumoto Y, Ota M, Yasuda H, Tsumoto T, Aruga J, Craig AM.
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Journal Title
Nature neuroscience
Volume: 15 (3)
Pages: 389-398
DOI
Peer Reviewed
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