2012 Fiscal Year Annual Research Report
不安・気分障害関連遺伝子Slitrk5の機能解析と疾患発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
23700457
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松本 圭史 独立行政法人理化学研究所, 行動発達障害研究チーム, 研究員 (60513463)
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Keywords | Slitrkファミリー / 神経 / LRR |
Research Abstract |
本研究は様々な精神神経疾患・神経発達障害の原因遺伝子として報告されているSlitrkファミリーの機能解析を行い、疾患発症のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的とした。まず、In vivoでの機能を調べるために、Slitrk5ノックアウトマウス(以下KOマウス)を作製し、基本的な身体的異常を調べる試験から、不安症状を調べる試験や記憶学習を調べる試験、鬱症状を調べる試験まで様々な行動解析を行った。その結果、Slitrk5 KOマウスは基本的な身体・学習能力には問題はなかったが、不安症状の亢進と鬱症状が見られた。つまりSlitrk5はこれらの疾患の発症に関わっている可能性が示唆された。さらに、Slitrk5の脳内での発現部位を免疫染色法により調べたところ、海馬に非常に特徴的な発現パターンを示した。また、海馬の初代培養細胞を用いてSlitrk5タンパク質の神経細胞での分布を調べたところ、後シナプス部位に集積が見られた。一方共同研究により、海馬初代培養細胞を用いた実験により、Slitrk5だけでなくSlitrkファミリーは神経突起や棘突起形成誘導に関与していることを明らかにした。またHPLCにより脳内のいくつかの部位におけるモノアミン量を測定したところ、KOマウスでは海馬のセロトニン量が優位に低下していた。そこで、KOマウスの海馬における神経活動を電気生理学的手法により調べたところ、KOマウスの海馬シナプスにおいてLTPの有意な上昇が見られた。このことはKOマウスにおける海馬シナプスが何らかの要因により幼若化している可能性が示唆された。これらの結果により、Slitrk5のKOマウスではシナプス形成が不十分であることにより不安・鬱症状を示すことが示唆された。
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