2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代タンパク質用デリバリー素材:タンパク質を温和に保持し放出するナノマシン
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23700539
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 健 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70335785)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質 / ドラッグデリバリー / 合成高分子 / 高分子電解質 |
Research Abstract |
3価のイオン性基をデキストランに種々の割合で修飾したカチオン性およびアニオン性の高分子を合成した。修飾率が15 mol%の場合は、閉じた会合体を形成できず、マクロな沈殿が多く生じたが、5 mol%程度と低いときに、広いアニオン性およびカチオン性高分子の混合比において、直径が30 nm程度のナノゲルを形成しうることが分かった。 イオン強度に対する安定性を高める目的で、ナノゲルの塩橋の一部を化学結合によって架橋した。非架橋のナノゲルは、MgCl2の添加に伴い、塩橋が弱まり粒径が変化したが、架橋したナノゲルではその変化は最小に抑えられた。また、pH変化に対しても高い安定性を保持していた。 ナノゲルに対するタンパク質(アルブミン、リソソーム)の内包を検討した。蛍光相関法およびゲルシフトアッセイにより、検討したが、内包は見られなかった。タンパク質表面のイオン性基とナノゲルの塩橋部との相互作用はかなり弱いことが明らかとなった。タンパク質内包のためには、塩橋部の電荷の数を増やして、よりタンパク質表面電荷との相互作用を強める必要があると考えられる。また、疎水性相互作用を利用して、静電相互作用を補強するような方策も有効かもしれない。 次に、ナノゲル自身の細胞内取り込みを調べたところ、細胞内にはほとんど取り込まれないことが分かった。効率的な細胞内取り込みのために、カチオンを過剰にしたナノゲルの調製が有効と考えられる。最後に血中滞留性を調べたところ、肝臓に多く蓄積することが分かった。このことは、生理塩濃度中では、凝集する可能性を示しており、やはり、塩橋の強度を強めることによる凝集の抑制が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
得られたナノゲルに関して物理化学的に詳細なデータを蓄積することができたが、タンパク質内包を実現するに至っていない。しかし、詳細な検討により、改善すべき点は明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
塩橋の電荷の小さいことが、タンパク質表面電荷との相互作用が小さい原因と考えられる。したがって、電荷を大きくしたナノゲルを作成する。また、生理塩濃度条件ではそもそも静電的な相互作用は弱い可能性があるので、疎水性相互作用による補強も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子設計の改良のために、試薬を購入する。また、得られたナノゲルを細胞実験により評価するために、細胞の染色試薬、培養試薬などを購入する。
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