2011 Fiscal Year Research-status Report
褥瘡発生の主要因となる物質の同定と物理療法による発生・重症化予防
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23700602
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒瀬 智之 広島大学, 保健学研究科, 助教 (20363054)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 褥瘡 / 皮膚温 / 血管開通率 / 炎症性サイトカイン / 酸化ストレス |
Research Abstract |
褥瘡の発生には血流が関係すると言われている。しかし、血流の変化を組織学的に観察したものはない。これまで、内皮細胞に結合するタンパク質を使用することで、開いている毛細血管を染めることができており、抗PECAM-1抗体を用いた全血管の染色と組み合わせることで、組織学的に皮膚の毛細血管開通率を調べることができている。この方法を使用し、正常な皮膚における皮膚の温度と毛細血管開閉の関係を調べた。皮膚温が20℃、30℃、40℃になるように、冷水か温水でラット腹部皮膚を冷やすか温めると、皮膚温が高いほど血管開通率は高く、皮膚温が低いほど血管開通率は低くなった。20℃では著しく開通率が低下しており、10℃でもほとんど変わらなかった。また皮膚だけでなく、深部の皮下組織、筋層も同様の変化を示した。 同じように骨格筋、心臓、末梢神経、脊髄、胃、小腸、十二指腸、膵臓、腎臓、甲状腺、胸腺などで、開いている毛細血管を染色できた。しかし、縦走する血管が多い組織では、連続した切片上に同一の血管があらわれないこともあり、開通率を算出することができなかった。同一切片上で全毛細血管と、開いている毛細血管を染め分ける必要がある。 数種類の炎症性サイトカインや酸化ストレス関連タンパク質の免疫染色を行っているが、染色が不十分であったり、予想した結果と染色結果が異なり、十分な解釈ができていない。免疫染色だけでなく、ウエスタンブロットやELISAなどを用いた生化学的な解析が必要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褥瘡の発生に血流が関係することが述べられている。内皮細胞に結合するタンパク質を使用し、皮膚の血管の開通率を調べることができている。またこの方法を使用し、皮膚に加わる圧力と毛細血管開閉の関係や、皮膚の温度と毛細血管開閉の関係を調べることができた。 しかし、炎症性サイトカインや酸化ストレスに関するタンパク質の免疫染色は、染色がうまくいかなかったり、予想と染色結果が異なるために解釈ができていない。そのため褥瘡との関連性を示すことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは正常組織における血管開通率を調べてきた。褥瘡発生過程における血流の変化はまだ調べておらず、圧迫を繰り返して褥瘡が発生する過程での毛細血管の開閉を調べていく。組織学的な観察だけでなく、マイクロCTを使用し、生きた動物での血流変化も調べていく。 免疫染色は結合組織の分解にかかわるタンパク質分解酵素に対する抗体を用いた免疫染色を行っていく。 褥瘡発生過程のmRNA発現はまだ検討していない。特に重症化に至る個体や軽症でとどまる個体で発現の異なるmRNAがないか検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
圧迫時や圧迫後の褥瘡形成過程の血管の開閉を調べるための試薬やマイクロCTで使用する血管造影剤を購入する。タンパク質分解酵素に対する抗体を購入する。mRNA発現解析のためのプライマーキットや試薬を購入する。
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Research Products
(7 results)