2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700795
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 亨 東京大学, 教育学研究科(研究院), 特任助教 (80419473)
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Keywords | 気分障害 / 身体活動 / 心拍変動 / 心身の健康 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、治療に伴う自律神経機能変化・行動変容と臨床スコアの経時的変化との共変性の検討、および先行研究で得られた行動指標の精神医学的妥当性を検証するため、大うつ病性障害患者(MDD)を対象とした修正型電気痙攣療法(mECT)施行過程における身体活動の連続計測(>4週間)、および治療前後のホルター心電計測を実施した。治療前後の行動組織化則と臨床スコアの変化を比較したところ、臨床スコアは劇的に改善されているにも関わらず、行動指標には有意な差は認められなかった。一方、心拍変動の非ガウス性指標において、治療後の交感神経活動の亢進が確認された。さらに、躁・うつ状態を高頻度で繰り返す急速交代型の双極性障害患者(BPII型)を対象に、長期連続身体活動計測(>6ヶ月)を行い、病相転移時期を含む身体活動と主観的気分の同時連続記録を得た。BPのうつ病相では、MDDと同様、身体活動時系列における休息期間の系統的な増加(すなわち、間欠性の増加)がみられ、その分布形状(べき乗分布)を特徴づけるパラメータ(べき指数)の値が顕著に低下することを確認した。一方、軽躁病相では、そのような間欠性の増加が抑えられ、うつ病相と比較して、べき指数の値が増加(もしくは正常化)することを確認した。さらに、主観的気分と行動指標との間に、有意な正の相関が存在することを確認した。また、数理科学的側面からのアプローチとして、行動組織化の現象論的モデルを提案した。本研究により、精神行動異常を特徴づける行動組織化指標が、気分障害を含む様々な精神疾患の分類に有用であり、さらに、病態・病相の客観的評価および病相転移の評価に有用であることが示された。一方で、mECTの奏功機序の特異性から、気分障害の発症に関わる生物学的機序の多様性が精神疾患の病態や有効な治療法の個人差を構成しているのではないかという新たな作業仮説を得た。
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Research Products
(10 results)