2011 Fiscal Year Research-status Report
イソチオシアナート由来チオヒダントインの抗酸化活性および生体内変化に関する研究
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23700893
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
高橋 朝歌 長野県短期大学, その他部局等, 助手 (90290113)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | チオヒダントイン / 抗酸化性 / 安定性 |
Research Abstract |
本研究は食品成分であるチオヒダントインの抗酸化性とそのメカニズムを解明するとともに,チオヒダントインの生体内における変化を解明することを目的としている。食品中に見いだされるイソチオシアナート(アリル,3ブテニル,4メチルチオ3ブテニル)と各種アミノ酸から調製したチオヒダントイン(ATH-a.a, 3BTH-a.a, MTBTH-a.a)を用いて以下の結果を得た。1)ATHを用いて各種pH条件下ならびに各種温度条件下におけるチオヒダントインの安定性を検討した。チオヒダントイン溶液をpH1~11に調整した緩衝液と混合して4℃で静置し継時的に270 nmの吸光度を測定して残存率を調べた。いずれのATHもpH1~7では極めて安定であり,168時間経過後も90%以上が残存していた。pH10,11ではいずれのATHも反応開始直後に50%程度まで残存率が低下し,24時間後にはほとんど残存していなかった。次にpH5の緩衝液と混合し,25,36,50,75,100 ℃での安定性を検討した結果,25,36℃では,ATH-Lys, Ser, Thrを除くATHはきわめて安定であった。高温になるに従っていずれのATHも残存率の低下が早まったが,100℃,24時間後でも30~80%が残存しており,高温条件下でも比較的安定であることが明らかになった。2)ABTSラジカル消去活性試験を行った結果,Gly, Glu, Tyr, Trp, Ser, Hisから調製したチオヒダントインに強いラジカル消去活性が認められた(IC50 8~42microM)。Gly, Gluはイソチオシアナートに由来する部分構造が変わっても活性の強さに変化はなかったが,Tyr, Trpの活性の強さはATH>3BTH>MTBTHとなった。ATHを用いてDPPHラジカル消去活性試験を行った結果,顕著な活性を示すものは見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究期間で計画している項目は,(1)チオヒダントインの抗酸化性と化学構造との関連および抗酸化機構の解明,(2)チオヒダントインのpH,温度,光に対する安定性の解明,(3)チオヒダントインの生体内変化の解明である。現時点で,(1)と(2)の一部が終了した。当初の計画では,23年度に(1),24年度に(2)と(3)を検討する予定であったが,生理活性試験の条件などを検討する必要性から,安定性試験を先に検討することとし,現在までにpHと温度に対する安定性試験を行った。安定性に関する検討はほぼ完了し,抗酸化試験については化学反応を用いる試験系が進んでいる。今後生体モデル系を用いた抗酸化試験を中心に行っていく予定であり,現在までのところ研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
チオヒダントインの安定性試験については,現在,光に対する安定性,アルコール存在下における安定性について検討しているところである。ATHだけでなく,3BTH, MTBTHについても同様の検討を行い,イソチオシアナートの側鎖構造による安定性の比較を行う予定である。これらの実験は7月ごろまでに完了する予定である。また,リノール酸の自動酸化に対する抑制作用,NOラジカル消去活性について現在検討しており,これらの化学反応を用いた抗酸化試験を終えた後,酵素反応を用いるSOD様活性,ラット肝ミクロソーム,ウサギ血液を用いた生体モデル系での抗酸化試験を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時には,23年度の研究経費として抗酸化活性試験用の試薬の購入代金を計上していたが,先に述べたように抗酸化活性試験の一部(生体モデル系)は23年度中に検討できなかったので,経費の一部を24年度に繰り越した。24年度は生体試料を用いた抗酸化活性試験や生体内変化に関する検討を行う予定であるため,繰り越した分も含めた研究費は主に抗酸化試験用試薬(ウサギ血液,ラット肝ミクロソームなど生体試料),代謝試験用試薬(ラット肝ミクロソーム,NADPH生成系試薬)や器具類の購入に使用する予定である。23年度に購入した備品(マイクロプレートリーダー)は,安定性試験と抗酸化活性試験で引き続き使用する。
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