2011 Fiscal Year Research-status Report
神経・行動科学的アプローチによる認知症防御を目指した柑橘類由来成分探索と機能解明
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23700941
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
奥山 聡 松山大学, 薬学部, 助教 (40550380)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 柑橘類果皮成分 / オーラプテン / ヘプタメトキシフラボン / 脳虚血 / 抗炎症作用 / 脳由来神経栄養因子 |
Research Abstract |
日本における死亡率第三位は、脳血管の破綻や梗塞などの脳血管疾患であるが、死亡率が高いこと以外に重度の後遺症で患者のQOLを低下させる原因にもなっていること、脳虚血は血管性認知症を引き起こすこともあることから、予防法や治療薬の開発が重要であると考えられる。愛媛県特産柑橘の一つである「河内晩柑」の果皮には、クマリンの一種であるオーラプテン(AUR)と、ポリメトキシフラボンの一種であるヘプタメトキシフラボン(HMF)が、他の柑橘類に比べ多く含まれている特徴があり、我々はこれらの化合物に着目し脳虚血障害に対する作用について研究を行った。はじめに、麻酔下でC57BL/6マウスの頸動脈流を12分間一時的に止め、再還流することで全脳虚血モデルを作製した。AURを入れたAlzet浸透圧ポンプを背側皮下に埋め込むことで、除方的な連続投与を行った。投与量は25、50mg/kg/dayとし、虚血手術直後にAURサンプルの投与を開始し、8日目に脳を摘出、脳切片を免疫組織化学法により評価した。AUR投与により、死亡率上昇の抑制、海馬におけるシクロオキシゲナーゼ-2ならびにミクログリア活性抑制による抗炎症効果、また虚血によって引き起こされる神経細胞死を抑制した。次に、虚血手術の5日前に25、50mg/kg/day のHMFを入れた浸透圧ポンプを背側皮下に埋め込み、虚血手術の3日後に解剖するスケジュールで、HMFの脳虚血障害に対する予防効果について検討した。虚血後3日目の脳切片を免疫組織化学法により染色したところ、海馬歯状回付近における脳由来神経栄養因子産生の増強、さらに新規産生神経細胞の増加などを見出した。これらの結果を総合すると、AURとHMFを豊富に含む河内晩柑の果皮が、脳虚血障害に対し抗炎症・栄養因子産生作用を含めた様々な生理活性を持つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全脳虚血モデルマウスを作製し、AURの抗炎症作用やHMFの栄養因子産生作用など、それぞれの化合物の特徴を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
AURは虚血脳内で抗炎症作用を示すことによって、遅発性神経細胞死を抑える可能性が示唆された。このことは、血管性認知症の発症を抑える可能性が期待されることから、HMFで効果がみられた、予防的に前投与しておいてから虚血手術を行うスケジュールで、AURを行動薬理学的ならびに組織化学的手法で評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全脳虚血モデルマウス作成のための動物購入費用と、各種測定のための抗体や一般試薬購入費用に充てる。
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Research Products
(1 results)