2011 Fiscal Year Research-status Report
C.elegans幹細胞株樹立と腫瘍・糖鎖遺伝子発現制御による腫瘍モデルへの応用
Project/Area Number |
23701060
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
水口 惣平 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 産学官連携研究員 (50398103)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | C. elegans / 癌 / 幹細胞 / 糖鎖 / 腫瘍 / 分化 |
Research Abstract |
C.elegans の幹細胞株樹立と腫瘍・糖鎖遺伝子発現制御による腫瘍モデルへの応用に関して以下の成果を得た。1)線虫生殖幹細胞を未分化な状態に維持するNotchシグナル関連遺伝子群(gld-1, 2, lag-2, fbf-1, 2等)の遺伝子機能欠失型変異体の表現型解析;多くの遺伝子が線虫生殖幹細胞の正常分化を抑制し、生殖巣内で細胞の過形成を引き起こした。卵成熟過程に必要な減数分裂が阻害されたまま、異常な細胞分裂を繰り返す表現型が発現した事から、腫瘍形成モデルへの応用の可能性が示唆された。2)ヒト癌関連遺伝子の線虫相同遺伝子の解析;独自に構築した「線虫遺伝子情報解析サーバー」を用いた。ヒト癌関連遺伝子候補466の43%に相当する203の線虫相同遺伝子を特定し、それらの多くが機能阻害により胚性致死等の重篤な表現型を示す事が判明した。また、線虫癌関連候補遺伝子203中には糖鎖遺伝子や生殖幹細胞の分化に関わるglp-1/ lin-12(ヒトNotch homolog 2, リンパ腫と関連)も含まれ、線虫腫瘍モデルのヒト応用への可能性が示唆された。3)線虫腫瘍関連遺伝子の網羅的・複合的機能解析;2)の解析によって得られた結果を基に遺伝子を選定し、RNAi法による機能阻害を行うと共に、変異体の取得、生殖巣への導入による遺伝子改変線虫の作成を行い、分子の過剰発現、細胞内局在を、継時的かつ詳細に解析している。現在までに、GFP融合lag-2(線虫 Delta)過剰発現線虫に対して、Notch シグナル関連遺伝子を機能阻害すると、生殖巣内細胞の過形成と並行して神経組織の形成、分化にも異常が生じる事を見出している。この表現型は以前報告した複合糖質グリコサミノグリカンの機能阻害による表現型と類似しており、糖鎖遺伝子による分化制御、腫瘍形成メカニズム解明の糸口として重要と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の通り、交付申請書23年度計画項目の内容に即して順調に研究は進行中である。線虫幹細胞分化に関わる分子、並びに腫瘍形成に関与する可能性のある分子群の特定が完了し、既に解析を始めている。また、トランスジェニック線虫作成のためのマイクロマニピュレーション技術、至適条件も確立し、遺伝子導入ベクターの作成も進行している。更に現段階で、線虫生殖幹細胞分化に関与する分子群が、減数分裂、卵成熟のみならず、神経分化にも関与している事実を発見しており、研究の進行は順調であると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書平成24年度計画項目に対して、大きな変更はない。線虫幹細胞分化に関わる分子ネットワークの解析を継続して実施する。また、線虫腫瘍関連遺伝子の網羅的・複合的機能解析に関して、機能阻害と亢進、並びに、線虫個体、培養細胞の表現型の観察を発展して行う。更に線虫変異体株の交配による、新規腫瘍形成線虫変異体株の作成と解析を試みる。また、線虫生殖系列幹細胞分化に関与する分子の異常が、神経組織の発生、分化にも影響を与えることを発見出来たため、本研究をヒト神経幹細胞分化機構の解明にも応用出来ないか等、研究の発展も試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プラスチック器具、ガラス器具、顕微鏡その他機器使用料/消耗品、薬品類、ベクター類購入費、抗体・siRNA等購入費、参考書籍購入費に全額使用予定である。
|
Research Products
(9 results)
-
[Journal Article] Ceramide glucosyltransferase of the nematode Caenorhabditis elegans is involved in oocyte formation and in early embryonic cell division2011
Author(s)
Nomura KH, Murata D, Hayashi Y, Dejima K, Mizuguchi S, Kage-Nakadai E, Gengyo-Ando K, Mitani S, Hirabayashi Y, Ito M, Nomura K
-
Journal Title
Glycobiology
Volume: 6
Pages: 834-848
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-