2011 Fiscal Year Research-status Report
低炭素型食料消費に向けた環境・経済・社会影響評価とその予測手法の開発
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23710064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉川 直樹 立命館大学, 理工学部, 助手 (10583271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ライフサイクルアセスメント / 農業生産 / 物質循環モデル / 家計行動 / シナリオ分析 |
Research Abstract |
本年度は、食料の環境・経済・社会影響手法の構築の基礎となる、米の生産・消費における環境負荷の精緻化と、食料消費構造変化の将来予測に関する検討を行った。米の生産・消費における環境負荷、とりわけライフサイクルアセスメント(LCA)の考え方に基づく、サプライチェーン全体を考慮した評価においては、農業由来のCO2以外の温室効果ガスについては原単位を用いる等、多くは生産方法の違いを十分考慮していなかった。実測に基づく研究も一部あるが、広域的な環境負荷削減ポテンシャルの評価のためには、一定の精度を持ったモデルの活用が重要である。そこで、本年度は、水田の物質循環モデルであるDNDC Riceモデルを用いたLCAにより評価し、緑肥を用いた栽培等、生産方法の違いが環境負荷に及ぼす影響を明らかにするとともに、DNDC Riceモデルを用いたLCA評価手法の適用性について検討を行った。一方、環境負荷削減ポテンシャルを国などの広域レベルで評価するためには、将来の食料消費構造の把握が、評価のベースラインとして重要になる。本年度は、食料需要の変化に関して、家計の消費行動データから、核家族化・高齢化など年齢・世帯要因が、わが国の食料需要構造にもたらす影響を評価する手法を構築した。(産業連関分析による)環境負荷データベースを用いてライフサイクルCO2排出量を推計した結果、高齢化等の世帯属性変化はCO2排出量の増加をもたらし、人口減少の相当部分を相殺しうることが明らかとなった。また、社会・経済影響手法の開発については、関連研究の文献調査を実施した。以上ように、本年度は、環境・経済・社会影響手法による環境負荷削減ポテンシャルの評価のために必要な基礎的分析を行った。これらの成果は、次年度以降の影響評価手法開発の結果とともに、包括的なかつ実践的な環境・経済・社会影響評価手法の一端を担うものと位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、農業生産における従来のLCA手法の改良など、研究計画に記載した予定通りに研究を遂行した項目のある一方で、社会影響評価の予備調査については、今年度において国外調査を行うことができなかった等の要因により、十分に実施ことができなかった。しかし、当初最終年度に予定していた、マクロ評価のための食料需要のシナリオ分析を実施することができたため、総合すると、多少の遅れはあるものの、おおむね当初の予定通りに進捗しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度において十分な進捗が見られず、本研究において最も重要な、経済・社会影響評価手法の開発に力を入れることとする。本年度における文献調査をベースとして、国内・国外における調査を通じ、評価する影響の絞り込みと定量評価手法を確立する。最終年度においては、本年度の研究成果である環境影響評価を組み合わせ、環境負荷削減技術について、提案する影響評価手法に基づく、広域レベルの評価を含むポテンシャル評価を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度においては、国外調査を行うことができなかったため、調査のための予算が使用されず、次年度に繰り越すこととなった。しかし、本研究の目的、とりわけ影響評価手法の確立においては、国外調査は必要不可欠であることから、次年度以降は国外調査を積極的に行うこととする。これに加え、国内の調査を複数回実施するとともに、研究成果の公表および、研究をより発展させる議論のために、国内外の学会発表と論文発表を行う予定である。本研究では、次年度以降、上記の調査に伴う旅費、英文校正費用などを含む論文発表に伴う費用、および学会発表に伴う旅費を中心に研究費を使用する予定である。これらに加え、データ分析に用いるソフトウェアや、研究データ整備のための謝金、参考図書の購入費用等、研究推進に必要な消耗品や人件費などに研究費を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)