2012 Fiscal Year Research-status Report
低炭素型食料消費に向けた環境・経済・社会影響評価とその予測手法の開発
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23710064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉川 直樹 立命館大学, 理工学部, 助手 (10583271)
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Keywords | 環境・経済・社会影響評価 / 農業 / ライフサイクルアセスメント / 国際情報交換(タイ) |
Research Abstract |
本研究の目的である、食料・農業分野における環境・経済・社会影響の定量化手法の構築のため、前年度までに行った、うるち米を対象とするライフサイクルアセスメント(LCA)の結果をもとに、社会・経済影響手法を検討した。 これまでに、農業生産方法の変更は、生産者のコスト、労働時間、土壌成分、さらに土壌起源・化石燃料起源の温室効果ガス排出量にも影響を与えることや、投入資材の調達を通じた経済波及効果の分析の必要性も明らかにしている。これらの影響を包括的に分析するために、土壌からの温室効果ガス排出モデル、従来のサプライチェーンにわたるLCAの枠組み、労働投入・雇用効果に関わる評価、経済波及効果に関するモデルについて整合性・統合可能性を検討した。その結果、それぞれの必要データのかなりの部分は共通しており、LCAの分析項目に加え、作業の時系列的な把握や土壌成分の分析を行い、産業連関分析などの統計解析と組み合わせることで、評価可能になることがわかった。 さらに、研究目的に照らし、農業における多面的機能も影響の一つとして評価が必要であることから、分析枠組みの構築を行った。LCAの影響評価(インパクトアセスメント)手法と、環境経済学的手法を参考に、農業生産(土地利用)が地域環境・食料安全保障への効果を通じ、環境・経済・社会のどの側面に影響を与えうるかについて、因果関係のモデリングのための情報整理を行った。 また、開発した手法の海外事例への適用のため、タイ・バンコク近郊にて予備調査を実施した。灌漑農業と天水農業のそれぞれの複数の生産者へ聞き取り調査を行い、その投入資材、労働投入、生産性に関する情報を収集した。 本年度の一連の調査・分析は、環境・経済・社会影響の定量化手法に関して、必要な手法の事前調査等を踏まえた実際的な開発段階、およびその改善のための事例調査の準備段階と位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、環境・経済影響評価手法の分析・整理に関しては予定通りの進捗である一方、社会影響評価については、定量的分析手法の提示には至らず、やや研究の進展に遅れがみられる。また、初年度において海外での調査を行わなかったこともあり、海外事例への提案手法の適用についても、当初の計画ほどには進んでいない状況である。 しかし、初年度において、当初最終年度において実施予定の、食料消費レベルの分析の一部を実施していることから、多少の遅れはみられるものの、全体としておおむね予定通りの進捗であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究計画のうち、最も進捗が遅れていると思われる、社会影響の開発に重点をおく予定である。 多面的機能や労働・雇用に関する影響を中心とし、定量的分析枠組みの提案を行う。本研究課題の限られた期間内では、手法の完成に至るのはもとより困難ではあるが、主要な影響を網羅した定量的に評価手法として、今後の改善のためのベースとなる、影響全体を通じた評価の枠組みを、一定以上の信頼性・網羅性を有するよう配慮しつつ構築する。また、これまでの成果をもとに海外研究者との情報交換にもつとめ、海外調査と合わせ、より適用可能性の高いモデルとなるよう、枠組みの改善を行う計画である。 次年度が本課題の最終年度であることから、上記の計画をなるべく早く遂行し、研究結果の取りまとめと成果の公表に向けた準備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、計画していた海外調査を行わなかったため、本年度の使用額は計画よりかなり多い状況であった。本年度は海外調査を実施したことに加え、国際会議での発表を積極的に行うとともに、関連する研究会での情報収集に努めたことから、本年度の使用額は計画よりも多くなった。その結果、次年度使用額は、前年度のものよりも縮小している。 次年度については、次年度に請求していた予算と合わせ、海外・国内での調査や、関連研究者との情報交換や成果の公表を中心に予算を使用する。最終成果を、様々な事例への適用性の高いものとなるよう意識しつつ取りまとめることと、その成果を広く公表することを重点に置き、研究費を使用していく予定である。
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Research Products
(3 results)