2011 Fiscal Year Research-status Report
3次元走査型原子間力顕微鏡による生体膜/生体液界面のナノ空間計測
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23710142
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
淺川 雅 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 助教 (90509605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノバイオサイエンス / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体膜と生体液の界面に形成される水和構造や脂質頭部―イオン複合体の3次元空間分布を分子スケールで直接計測する3次元走査型の原子間力顕微鏡(3D-SFM)を開発することである。初年度(平成24年度)は観察溶液の蒸発を抑える密閉型のSFM計測セルを設計・製作し、脂質分子の流動性や溶液条件を再現性良く制御できる3D-SFM計測システムを構築することを計画した。この研究計画に沿って、新しい発想に基づく密閉型SFM計測セルを考案した。具体的には、試料や観察溶液とは直接接触しない液体で密閉空間を形成することで機械振動の伝搬パスをつくらず、可動範囲を制限しない密閉型SFM計測セルを設計した。従来のOリングなどを使った密閉型AFM試料セルで問題となっていたスキャナーなどの駆動部からの機械振動ノイズを抑えることが可能となった。さらに観察溶液の蒸発を大幅に抑制でき、長時間の安定な分子分解能SFM観察が可能となった。この密閉型SFM計測セルは国内外に特許出願するに至った。さらに同じSPMプローブで溶液条件を変えながら計測ができるように溶液交換システムを密閉型SFM計測セルに搭載し、恒温器内部に設置した。これにより常に溶液温度を一定に制御でき、溶液交換の直後でも低ドリフト条件での連続計測が可能となった。以上のように、生体膜と生体液からなる界面の3次元空間計測を実現するために、密閉型SFM計測セルの開発を完了し、初年度の研究目標を概ね達成できた。今後、開発した密閉型SFM計測セルを用いて界面に形成される水和層と脂質分子の流動性の関係について分子レベルで明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、生体膜と生体液の界面に形成される水和構造や脂質頭部―イオン複合体の3次元分布計測手法の開発を実現することである。初年度は、温度・溶液条件を高精度制御しながら分子分解能計測を可能とする密閉型SFM計測セルの開発を完了した。これらの成果は初年度の研究計画通りであり、概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体膜にはナノメートルスケールの脂質ドメインが存在することが示唆されている。相分離により流動性や表面電荷が局所的に異なる脂質ドメインを形成するDPPC/DOPC(ゲル層/流動層)、DPPC/DPPS(双性イオン/アニオン性)を生体膜モデルとして用いて、2つのドメイン間における界面複合体の空間分布の違いを分子レベルで計測することを目指す。また実際の生体膜を模倣した研究モデルとして広範に用いられるDOPC/スフィンゴミエリン/コレステロールの脂質二重層を調製し、3D-SFM手法が生体膜の局所領域に形成される界面複合体を3次元空間分布像として可視化できることを実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要となる3D-SFM計測装置の開発は概ね完了したため、次年度は生体膜モデルの3D-SFM計測が主な実験内容となる。そのため生体膜モデルの調製に必要な脂質分子、化学試薬、ガラス・プラスチック容器やAFMカンチレバーなどの消耗品が主な支出となる。また学術会議での成果発表や、共同研究者との打ち合わせのための出張旅費を支出予定である。
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Research Products
(3 results)