2013 Fiscal Year Annual Research Report
3次元走査型原子間力顕微鏡による生体膜/生体液界面のナノ空間計測
Project/Area Number |
23710142
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
淺川 雅 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 助教 (90509605)
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Keywords | ナノバイオサイエンス / 原子間力顕微鏡 / 脂質膜 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体膜と生体液の固液界面を計測する3次元走査型力顕微鏡(3D-SFM)を開発することである。初年度(平成23年度)は、観察用液体の蒸発を抑える新しい密閉型のSFM計測セルを設計し、前年度(平成24年度)には、リン脂質DPPCの脂質二重層およびDPPC/DOPC相分離膜の3D-SFM計測に取り組んだ。そこで生体膜/生体液界面で得られる3D-SFM像には、水和構造や表面揺動構造に加えて、脂質膜の流動性などの物性情報も取得できる可能性を示した。 そこで本年度(平成25年度)は、3D-SFM計測により表面構造に加えて膜物性に関する情報を同時に計測できるか詳細に検討することにした。まず緩衝溶液にMgイオンを一定濃度加えることで多層状のDPPC二重層をマイカ表面に形成できることを明らかにした。この多層状脂質膜では、マイカ表面に直接吸着した1層目と、さらにその上に形成された2層目とでは、マイカとの相互作用により膜の流動性や機械特性が異なることが予想された。そこで、1層目/2層目の境界近傍で3D-SFM計測を行い、詳細な解析を試みた。まず垂直方向の相互作用プロファイルの回帰分析より、表面電荷密度や長距離斥力の減衰距離を求めた。Si探針が酸化膜に覆われていると仮定すると、DPPC膜はわずかに陽電荷を帯びており、Mgイオンの吸着によると影響であると考えられる。1層目のDPPC膜が2層目に比べてより高いプラスの表面電荷密度を示しており、これはマイカとの相互作用により1層目の脂質膜の流動性が低下していることに起因していると考えられる。これらの結果は、他の計測手法を用いた従来の報告とも概ね一致しており、定量的な計測への応用が見込まれる。さらに、この回帰分析を3D-SFM像全体に対して適応することで、局所的な表面電荷密度や流動性をナノスケール分解能で可視化できることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)