2011 Fiscal Year Research-status Report
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23710144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 雅祥 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10346075)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | べん毛モーター / タンパク質 / 分子機械 / 高圧力 / 1分子計測 / バイオイメージング / 高圧力顕微鏡 / バクテリア |
Research Abstract |
大腸菌は、細胞外に長く伸びたべん毛繊維をスクリューのように回転させることで遊泳運動を行っている。本研究課題では、高圧力下において、大腸菌の遊泳運動がどのようにして阻害されるのか、そのメカニズムを明らかにする研究に取り組んだ。研究代表者らが開発した高圧力顕微鏡は、最大1500気圧の耐圧性能を有しており、圧力値にかかわらず、常圧力下と同じ解像度で明視野、暗視野、位相差、蛍光像の観察を可能にする。この高圧力顕微鏡を用いて、大腸菌の遊泳運動観察を行ったところ、圧力の増加と共に、遊泳運動を行う菌体の割合と、その速度が低下し、800気圧では全ての菌体が一方向性の並進運動を停止した。減圧後、菌体は再び、元の遊泳能を回復ししたため、高圧力による遊泳運動の阻害は可逆的であることが明らかになった。次に、テザードセルを用いた高い粘性抵抗下で低速で回転する条件下、さらに、直径250nmの金微粒子を用いた低い粘性抵抗下で高速回転できる条件、どちらにおいても、べん毛モーターは、800気圧で回転運動を持続しており、大腸菌が遊泳運動を行うのに十分なトルクを発生させていることが明らかになった。遊泳運動を行う大腸菌は、回転するべん毛繊維を束化することで、一方向性の推進力を発生させている。したがって、高圧力をかけることで、べん毛繊維の束化が阻害され、その結果、遊泳運動が阻害されると考えられる。今後は、高圧力下でべん毛繊維をひとつひとつ可視化することで、詳細な阻害機構を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度では、べん毛モーターの高速回転運動を可視化するため、小さなビーズの暗視野像を結像させるレーザー光を用いた暗視野照明の光学系の開発を予定していた。しかしながら、当初の予定よりも若干大きな金ナノ粒子を用いることで、S/Nを著しく増加させることに成功した。そのため、新しい光学系を開発することなく、研究計画通りに低い粘性抵抗下にある高速回転運動を測定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度までの取り組みにより、高圧力下では大腸菌はべん毛モーターが遊泳運動に必要な十分なトルクを発生させながらも、遊泳できなくなる現象が判明した。このメカニズムとして、べん毛繊維の多形変換が考えられる。H24年度では、べん毛繊維に蛍光修飾を行い、高圧力下で個々のべん毛繊維の形状を可視化することで検証を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に予定していた、レーザー暗視野照明の光学系の開発予算は、H24年度に繰り越した。H24年度では、高圧力下にあるべん毛繊維の可視化を目的として、開口数が高い高圧力容器の開発費用および、高開口数の対物レンズの購入等に使用し、研究を推進させる。
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