2011 Fiscal Year Research-status Report
核マトリクスタンパク質SP120による神経細胞核内構造の制御機構
Project/Area Number |
23710216
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮地 まり 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50349255)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 核構造 / 神経細胞 / 終末分化 / 反復配列 / 核マトリックス |
Research Abstract |
核マトリックスタンパク質hnRNP U/SAF-A/ SP120は、DNAにもRNAにも結合する多機能性の核タンパク質である。N末に存在するSAF-boxがMAR特異的DNA結合に、C末に存在するRGG-boxがRNA結合に重要であると考えられてきた。EMSA法を用いた詳細なドメイン解析の結果、RGG-boxを含むより広範なRGドメインがSP120のMAR特異的DNA結合に重要であることを示した。次にGST pull-down法により、RGドメイン単独でMAR特異的DNA結合活性があることを示した。RGドメインに存在するアルギニン残基をすべてリジン残基に変換した変異体を作成し、GST pull-down法により活性を調べた結果、非常に弱いDNA結合活性しか示さなかった。AT-rich DNAの副溝に結合するnetropsinを基質DNAに結合させてからRGドメインとの結合活性を調べた結果、MARとの結合活性が特異的に阻害された。一方、SAF-boxとMARとの結合活性は、netropsin存在下で予想外に促進された。以上の結果から、RGドメインのアルギニン残基が、AT-rich DNAの狭い副溝に結合することがSP120のMAR特異的結合に重要であり、SAF-boxは、RGドメインの結合を補助するモデルを提唱するに至った。アルギニンとグリシンにとんだ領域を有するタンパク質は、高等真核生物で多数報告がある。これまではRNA結合のみが着目されてきたこれらのタンパク質にMAR結合活性もある可能性が本研究により示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SP120のMAR結合活性に重要なドメインの決定を終了した。GST pull-down法でのタンパク質量のdose-responseをとった実験、およびAT-rich DNA特異的結合を示す薬剤netropsinの使用により、同定されたSAF-boxとRGドメインのMAR結合における性質の違いを明らかにした。結合配列の同定のため、satellite I配列を用いたSELEX解析を行う予定であったが、細胞内でのSP120結合配列に、より多様性がある可能性が示唆されたため、本年度は実施せず、代わりにChIP-seq解析を行った。次年度行う予定だったアルギニン残基をすべてリジンに置換した変異体の解析を繰り上げて実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
SP120が認識する配列の決定: 本年度は、satellite I配列に標的を絞りSELEX解析を行う予定であったが、より多様な標的配列を同定するため、ChIP-seq解析を行った。得られた配列から実際のゲノム上での標的配列を同定し、試験管内での結合解析を行うことにより、結合配列に共通する性質を見いだす予定である。神経細胞でのSP120の働きの解明: SP120のknock down系を構築する。SP120が核内に豊富に存在するタンパク質であること、初代培養神経細胞を用いていることなどが、完全なknock down系構築を困難にすることが予想される。可能な方法を検討し、より高効率のknock down系を構築する。困難な場合には、knock out法も考慮する必要がある。SP120のloss of functionにより生じる神経細胞核の構造の変化および、遺伝子発現の変化を調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BIACOREを用いた動力学的解析により、SAF-boxとRGドメインのMAR結合性の違いを示す予定であったが、この2つのドメインが予想以上に異なる結合性質を示した。より低感度な実験系での比較で十分に差異が示せたため、本年度はBIACOREを用いた解析を行わなかった。次年度、RGドメイン領域の点変異体をより詳細に解析するためは必要になるため、実施する予定である。初代培養神経細胞でのSP120ノックダウン系の確立を行うため、実験動物の購入、ノックダウンに必要な試薬の購入予定である。
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