2011 Fiscal Year Research-status Report
西南諸島に産する両生類絶滅危惧種の遺伝的多様性の解明と飼育繁殖における遺伝的管理
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23710282
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井川 武 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00507197)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / 環境と生物 / 集団遺伝学 / 景観遺伝学 / マイクロサテライト / 西南諸島 / 両生類 / 飼育下繁殖 |
Research Abstract |
本研究は、西南諸島に産する両生類絶滅危惧種について、野外集団の集団構造及び、遺伝的多様性を詳細に解明すること及び、飼育個体間の近縁度に基づいて計画的な繁殖を行い、永続的な継代飼育を実現することを目的として、4つの課題((1)マイクロサテライト(SSR)マーカーの開発、(2)種内の集団構造の解明、(3)集団内の遺伝的多様度の評価、(4)人工繁殖個体群における近縁度評価)について研究を行っている。初年度は(1)の課題である、イシカワガエル種群と、イボイモリについて、12遺伝子座と10遺伝子座のSSRマーカーを開発した。これらの成果は、今後、当該種の遺伝的多様性評価を行う上で有用である。さらに、イシカワガエルについては、(2)、 (3)の課題として、SSRマーカーを用いて集団遺伝学的及び、景観遺伝学的解析を行った。その結果、アマミイシカワガエルは、複数の遺伝的クラスターに分けられ、一方、オキナワイシカワガエルには階層的構造は見られなかった。さらに植生、地形などの環境変数に依存した移住に係るコストと遺伝距離を比較したところ高い相関が見られ、イシカワガエル種群における対称的な集団構造は、地形とそれに依存した生息適地の連続性の違いによって形成されたことが考えられた。これらの成果により、イシカワガエル種群の生息環境も含めた持続的かつ包括的な保全計画の提案が可能となる。また、イボイモリについても、同様にSSRマーカーを用いて解析を行ったところ、少なくとも島嶼間で遺伝的に異なり、さらに沖縄島内にいくつかの階層構造が存在することが分かっている。(4)の課題としては、アマミイシカワガエルの飼育繁殖集団について、SSRマーカーに基づいて近縁度の低い個体を選抜し、次世代を作出した。また、シュミレーションにより、非近縁個体のペア選択によってある程度、遺伝的多様性の低下が抑制できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた事項は予定どおり達成しており、特に本研究課題を実行するための基盤となるSSRマーカーが開発できたことは、大きな成果である。これにより、今後、さらに研究の進捗を加速することが期待できる。これらの成果は原著論文として、Conservation Genetics Resources誌に1報が掲載済み、1報が掲載予定、Heredity誌において1報が改稿中、一般報文として1報が日本爬虫両生類学会報に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では最終的に、西南諸島産の絶滅危惧両生類すべてについて、研究を行うことを計画しており、今年度は2種(イシカワガエル、イボイモリ)について、目的を達成しつつある。残りの種・種群についても、研究に着手し、最終的な目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、遺伝的解析における実験を行うための試薬・消耗品を予定している。旅費については、サンプル採集及び学会における成果発表旅費を予定している。人件費・謝金については、サンプル採集協力者への謝金を予定している。、その他については、実験に掛かる各種受注サービスの利用を計画している。
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Research Products
(6 results)