2013 Fiscal Year Research-status Report
前期から最晩期へ至るウィトゲンシュタインの世界観の変遷
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23720003
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 圭一 千葉大学, 文学部, 准教授 (30535828)
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Keywords | アスペクト / 世界 / 文法 / 知覚 / 思考可能 |
Research Abstract |
最終年度となる今年度は、一、二年目の成果を踏まえて前期ウィトゲンシュタインの世界観が中期から最晩期の世界観へと転換していく過程を明らかにすることを試みた。 本年度はまず、一、二年目の成果として得られた否定可能性に関する前期から最晩期へのウィトゲンシュタインの考察の変遷を、後期のアスペクト知覚についての議論へと援用することを試みた。具体的には『哲学探究』の第二部においてアスペクトの閃きが「内的関係の知覚」として捉えられている点に着目し、これを前期・中期の内的関係についての考察と比較した上で、アスペクト知覚とは他の諸対象との間の否定的関係(文法的な排除関係)のもとで対象を見ることに他ならないことを明らかにした。 続けて、このような世界の捉え方が前期の世界観とどこまで同じで、どこから変わっているのかを分析した上で、主体と世界と言語という三つの要素の相互関係についての考察を行った。具体的には、命題と世界との一致(命題の真偽)についての前期・中期・後期・最晩期のウィトゲンシュタインの見解を取り出した上で、「一致を確かめる主体」が消去される前期・中期とその主体が世界の中に受肉する後期・最晩期との比較検討を行った。その上で、ウィトゲンシュタインにとって最初から最後まで課題であった「思考可能性の限界」がどのように変化していったのかについての考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前期から後期への変遷のところまでは概ね順調に考察が進んだと思われるが、当初の予想以上にここのところで時間がかかってしまって、後期と最晩期との間のところについて考察を深めるための時間が足りなかった。また、他者についての考察まで到達することもできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ウィトゲンシュタインの最初と最後の思索を比較するという観点のもと、アスペクト論の変遷の過程や、命題と世界との間の一致・不一致の問題についての変化の過程についてもっと詳細に解明していくことを通じて、自然・過去・他者という三つの要素がどのような仕方でウィトゲンシュタイン哲学の中に取り込まれていくことになったのかを明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度に本研究の成果を学会で成果報告する予定であったが、国内のウィトゲンシュタイン研究者と話し合って次年度の日本哲学会においてウィトゲンシュタインの思想的変遷をテーマに共同でワークショップを行うことになり、そこで本研究の成果報告を行うことになった。それゆえ、本年度使用予定であった成果報告用の旅費を使用せず、来年度に回すことにした。 前述のとおり、平成26年6月に北海道大学で行われる日本哲学会のワークショップに参加するための旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)