2011 Fiscal Year Research-status Report
チベット伝来梵文仏典写本を用いたインド・チベット文化交渉史の総合的解明
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23720030
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
加納 和雄 高野山大学, 文学部, 助教 (00509523)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 梵文写本 / 仏典 / インド・チベット文化交渉史 / 国際研究者交流 / チベット: ネパール: イタリア: ドイツ |
Research Abstract |
[研究目的]チベット伝来梵文写本の解読研究が着手されて以来80年あまりが経過し、その学術価値は近年ますます注目されつつあるが、それら写本を巡って織りなされたインド・チベット間の文化交渉史を、総合的視点から明かそうとする研究はいまだない。本課題は、いつどこで写本が作成され、いかなる写本が何の目的でチベットに請来され、さらにそれがチベット文化にいかなる影響を与えたかを明かし、インド・チベット間の文化交渉史を、従来顧みられなかった観点から総合的に究明する。すなわち (A) チベット伝来の梵文仏典写本の由来、(B) インドからチベットへの梵文仏典写本の流伝の様相、(C) 梵文仏典写本がチベット文化に与えた影響、という三点から逐次解明をめざす。[研究実施状況]本年度は(A)について調査を遂行。サーンリティヤーヤンによるチベット伝存梵文写本目録を精査し、奥書に筆写時代・地域が記される写本を抜き出し、時代順に配列したリストを作成。またヴィクラマシーラ寺院で書写された写本を特定しえた。それらが筆写された場所を地図上にトレースすると、東インドおよびネパール由来の写本が多い。これはインド人亡命僧及びチベット人留学僧達がもたらしたものである。一方カシュミールからの将来写本が少ないのは、西チベットの諸寺院の衰退及び梵本を蔵していたトリン寺の焼失が関連していると予想される。[海外学会・研究会]2011年5月2~6日、ナポリ東洋大学プロチダ校舎で開催されたManuscripta Buddhica Workshop(Sferra 教授主催)において研究発表。2011年8月、ドイツ、ハンブルグ大学、ミュンヘン大学を訪問し、写本の共同研究。2011年2月、パリ、ギメ美術館を訪ね、梵文写本調査。2012年2月7~13日、ローマのアフリカ・東洋研究所(IsIAO)およびナポリ東洋大学にて写本調査・文献講読。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三点の目標のうち、(A)蔵伝梵文仏典の由来についての調査を、写本の書写年代・地域別リストを作成することによって、計画通り遂行しえた。写本の年代と地域の分布について把握することができた。データの分析・考察は、関連情報を総合したうえで、最終年度に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、第二、三年次には、上記(B)インドからチベットへの梵文仏典写本の流伝の様相、(C)梵文仏典写本がチベット文化に与えた影響の調査に順次移行する。 久間泰賢三重大学准教授およびHarunaga Isaacsonハンブルグ教授が各自の進めるヴィクラマシーラ寺院の写本および同寺院の顕密思想についてのプロジェクトと連携して調査を遂行中であり、今後とも連携を継続予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おもに旅費(ハンブルグ大学での写本読解共同研究、北京における蔵伝梵文仏典写本のパネル参加等)に7割、および、物品費(資料、情報管理機器)の購入に3割ほどを充てる。
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