2014 Fiscal Year Annual Research Report
チベット伝来梵文仏典写本を用いたインド・チベット文化交渉史の総合的解明
Project/Area Number |
23720030
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
加納 和雄 高野山大学, 文学部, 准教授 (00509523)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 梵文写本 / 仏典 / インド・チベット文化交渉史 / 国際研究者交流 / チベット:ネパール:イタリア:ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
[研究目的]本課題はチベット伝来梵文写本を巡って織りなされたインド・チベット間の文化交渉史という視座から、写本および付随する事象を総合的に解き明かそうとするものである。すなわち (A) チベット伝来の梵文仏典写本の由来、(B) インドからチベットへの梵文仏典写本の流伝の様相、(C) 梵文仏典写本がチベット文化に与えた影響、という三点から逐次解明をめざす。
[研究実施状況]本年度はこれまで個別的に検討した(A-C)の三点について総合的な視点から総括した。特に、チベット伝存梵本の表紙頁などにメモ書きされるチベット語による写本所有者の記述を網羅的に回収することによって、都合16の梵文写本についてその伝播のルートを追究しえた。また『宝性論』のチベット訳六種について精査し、チベット仏教における梵本研究の歴史の一面を詳らかにした。さらに『四讃歌注』、『阿闍世王経』佚文、『牟尼意趣荘厳』の梵文写本の翻刻をすすめ、カシュミールおよび東インドからチベットに伝わった仏教を思想面からも検討しえた。これらをもって梵文写本を通じ、インド・チベット文化交流史について、思想、地理、文物の観点から検討するという当初の課題を達成することができた。
[海外学会・研究会]2014年8月、ウィーン大学で開催された国際仏教学会(IABS)に参加し、その折に葉少勇氏(北京大学)とカシュミール由来の梵文写本の共同研究を行った。また2015年2月にはPeter Daniel Szanto氏(オックスフォード大学)を京都に招へいし、梵文写本研究会ならびに講演会を開催。2015年3月、ウィーン大学にてKlaus-Dieter Mathes氏と『宝性論』の梵本について共同研究を行った。
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