2013 Fiscal Year Research-status Report
現代エジプトにおけるコプト・キリスト教修道院の意味と役割
Project/Area Number |
23720033
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩崎 真紀 筑波大学, 人文社会系, 助教 (10529845)
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Keywords | エジプト / 宗教的マイノリティ / イスラーム / コプト・キリスト教 / 宗教共存 |
Research Abstract |
本研究は、エジプトの宗教的マイノリティであるコプト・キリスト教の修道院を事例とし、現代エジプトにおけるコプト修道院の意味と役割を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は3月に聖サミュエル修道院でのインタビュー調査および参与観察を行なった。エジプトの他修道院が多少なりとも観光の要素を持っているのに対し、聖サミュエル修道院は伝統的修道生活を維持している点がこれまでに明らかになった。本年度の調査では、同修道院が、伝統的修道生活維持のために、一般信徒の力を借りて、河岸段丘の岩壁に洞窟を作り、修道士の瞑想のためのセルとしていることも明らかになった。 エジプトでは平成23年初頭に民衆革命が起こった。そのため、エジプトでの調査がこれまで通りできないことが多くなった。これに伴い、当初の計画にはなかったが、エジプト国外に移民したコプト・キリスト教徒への調査も行うこととなった。これまで、革命の影響やエジプトとのつながりを調べるためのインタビュー調査をフランスで行ったが、本年度は、調査対象をカナダのコプト移民にも広げた。その成果は、国際会議で発表した(Maki Iwasaki “Coptic Egyptians and Migration: St. George and St. Joseph Coptic Orthodox Church in Montreal, Canada as a Case Study” at Tunisia-Japan Symposium on Society, Science and Technology (TJASSST)’13 at El Mouradi Hotel, Yasmin Hammamet, Republic of Tunisia on November 16, 2013)。また、これまでのコプト・キリスト教に関する研究も一部反映された業績以下にまとめた(岩崎真紀「アラブ諸国」山中弘・藤原聖子編『世界は宗教とこうしてつきあっている-社会人の宗教リテラシー入門』』弘文堂、212-231頁、総ページ数264ページ、2013年12月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年夏に、一般市民も巻き込んだムスリム同胞団や暴力的集団のあいだの衝突事件が頻発して以降、エジプト社会は、外国人渡航者にとり安全とは言い難い状況にあるため、申請者は2013年3月の調査以降、エジプトに渡航できないままである。そのため、聖サミュエル修道院の調査も進んでいない。この観点からいえば、当初の予定からは遅れている。しかし、フランスやカナダのコプト移民への調査により、コプト共同体の新たな側面が見えてきたという点においては、順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、エジプトの社会状況は極めて不安定であるため、今後、いつ現地調査ができるか、見極めることは大変難しい。そのため、26年度はカナダのコプト移民の調査を続けるとともに、最終年度として、研究成果をまとめる作業を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年夏にエジプト情勢が不安定になり、渡航が困難となったため。 エジプトの代わりに、コプト移民の多い北米に調査地を変更し、調査を続行する。その旅費に使用する予定である。
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