2013 Fiscal Year Annual Research Report
中近世移行期における絵巻・絵入り本の製作と大名家を中心とする受容
Project/Area Number |
23720061
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
龍澤 彩 金城学院大学, 文学部, 准教授 (00342676)
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Keywords | 絵本・絵入本 |
Research Abstract |
平成25年度は以下のように資料調査・学会発表・論文刊行を行った。 【資料調査】売立目録調査・・・徳川美術館所蔵資料を中心として、明治~昭和期の売立目録の中から、大名家旧蔵品の売立を中心として閲覧し、絵本・物語絵の所蔵について調査を行った。その結果、「酒呑童子」などの武士に関わる物語絵が大名道具の一部として所有されていた傾向が確認できた。調査の成果は、下記の学会において発表した。 【学会発表】「尾張徳川家における絵巻・絵入本の受容について」(説話文学会 平成25年6月29日)・・・シンポジウム「寛文・延宝期の文化的動態」において口頭発表を行った。徳川美術館所蔵品を中心として、17世紀前半期の現存作例の紹介のほか、蔵帳や売り立て目録を活用し、「武家の物語」の絵巻・絵入り本が象徴的な意味を持つ大名道具の一つとして受容されていた可能性について述べた。なお、この発表内容を改訂増補した論文(「大名家の絵本享受と絵巻・絵入り本制作の隆盛について」)は『説話文学研究』第49号(平成26年7月刊行予定)に掲載が決まっており、本研究の一つの成果として発表することができた。 【論文刊行】「東京国立博物館蔵「源氏物語冊子表紙絵模本」について」『MUSEUM』第643号、25~50頁、東京国立博物館、平成25年4月・・・東京国立博物館が所蔵する「源氏物語冊子表紙絵模本」は、住吉具慶によって延宝三年(1675)に描かれた源氏絵の模本で、冊子の表紙絵を写していると考えられ、原本の筆者を土佐光信とする極書がある。本論文では各図について他の現存作例や絵詞などの文献資料との比較検討を行い、原本の制作が室町時代に遡る可能性が高いことを指摘した。源氏絵に限らず表紙絵の遺品は少なく、中近世移行期の絵本受容を考える上でも重要な作例として発表した。
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