2013 Fiscal Year Annual Research Report
元禄期の江戸における浮世草子及び俳諧ネットワークの研究―出版文化を基盤として―
Project/Area Number |
23720123
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
速水 香織 信州大学, 人文学部, 准教授 (60556653)
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Keywords | 江戸時代 / 出版文化 / 浮世草子 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、近世前期に江戸において活動した出版書肆の活動調査を、書肆調査を中心に、継続して行うとともに、それらが手掛けた出版物の内容、及び時期・地域による特徴とその変遷について検討した。具体的には、万屋清兵衛の出版物調査を行う中で、同書肆の活動傾向が大きく転換する元禄15年前後の出版物を重点的に整理した。万屋清兵衛は、西鶴没後(元禄6年以後)、江戸・上方を問わず様々な方面から新たな取引先を模索し、各年につき、最低でも1点あたりの浮世草子出版に関わっているが、元禄15年からは江戸前句附俳諧書出版に携わり、活動傾向を変容させてゆく。江戸前句附俳書出版は、和泉屋三郎兵衛をその嚆矢とするが、その出版書を、間をおかず万屋清兵衛が求板していたことを再確認し、同時期における万屋にとっての前句附俳書出版の重要性について考察を加えた。これに関わる俳人と、万屋との交流の実態についてまでは調査を及ぼすことが、今後の課題である。 同時期、万屋清兵衛と八文字屋との取引が確認されているが、この八文字屋と万屋清兵衛との取引の端緒となる出版の実態についても調査を加えた。これは、同時期の浮世草子出版における江戸出版書肆と上方書肆との関係性に関わる問題でもあり、これにより得られた知見は、論文として公表する予定である。 また、江戸板浮世草子のうち、特に石川流宣作浮世草子並びに松月堂不角作浮世草子について、天和・貞享期浮世草子に見られる特徴について考察した。
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