2013 Fiscal Year Research-status Report
徳川将軍家の葬送にみる近世武家社会の権威構造の特質
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23720319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白石 愛 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (60431839)
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Keywords | 日本近世史 / 徳川将軍 / 葬送 / 考古学 / 人類学 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、史料蒐集を中心に研究を行った。国立公文書館において、平成25年4月11日、5月30日、6月13日、同20日、7月11日の計5日間、史料調査を行った。調査内容は、内閣文庫の史料閲覧およびデジタルカメラによる撮影であった。調査には研究協力者1~2名を同行し、撮影の協力を得た。内閣文庫所蔵の初代徳川家康から3代徳川家光までを中心に調査した。その他の将軍に関連して、表題のみでは判断し兼ねるが関連記事掲載の可能性のある史料についても閲覧し、有用な分に関しては写真撮影を行った。閲覧総数は75点であった。国立公文書館における史料蒐集は概ね終了と考える。 京都大学にて平成25年8月9日に史料調査を行った。文学研究科図書館では、徳川家斉に関連して「大御所家斉公薨去一件帳」甲乙2冊等を閲覧した。文学部古文書室では、「将軍宣下薨去一件帳 徳川時代書留集二」より「家慶慎徳院殿薨去一件帳」、「大御所様薨御ニ付御一件 御在所日記之写(家斉)」、「大御所有徳院吉宗公御他界一件書抜」等を閲覧した。附属図書館にて「厳有院様御法事之節公家衆参堂次第書抜」等計9冊の閲覧を行った。 茨城県立歴史館においては、平成26年3月7日~8日の2日間史料調査を行った。一橋家文書・三好家文書など14家42点の史料を閲覧、39点の撮影・複写を行った。 本年度は京都および茨城で調査することにより、将軍の薨去に際する伝播を示す史料を入手した。その他、研究の充実化に適う史料を蒐集したと評価できる。 一方、翻刻作業の進捗状況は思わしくなく、研究協力者3名に複数点依頼したが、25年度中に計1点26枚のみ提出された。代表者自身は20点ほど翻刻作業を進めた。 最終年度に出版予定の研究成果報告書に向けて、掲載史料の選定や本文執筆を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の25年度研究実施計画に示した史料調査および蒐集は、ほぼ予定通り進行している。国立公文書館の調査では75点の史料を閲覧・撮影した。内訳は、初代徳川家康関係14点、2代徳川秀忠関係16点、3代徳川家光関係30点、4代徳川家綱関係4点、5代徳川綱吉関係2点、6代徳川家宣関係2点、10代徳川家治関係7点である。概ね史料蒐集は終了した。 京都大学では文学研究科図書館、文学部古文書室、附属図書館にて閲覧を行った。研究に必要な史料に関しては複写申請を行い、当該年度内に納品された。特に、古文書室所蔵の「将軍宣下薨去一件帳 徳川時代書留集二」の中には、今まで良質な史料の少なかった吉宗に関する好史料を入手出来たと評価できる。 茨城県立歴史館の調査においては、14家42点の史料を閲覧、39点の撮影・複写を行った。将軍ごとの内訳は、14代家茂9点、12代家慶2点、11代家斉3点、10代家治11点、9代家重2点、8代吉宗1点、7代家継2点、5代綱吉~吉宗1点、未詳8点である。特に三好家文書では地方の藩に将軍家治の死がどのように伝わったか示す好史料であった。 翻刻では、8代将軍吉宗の記録である宮内庁書陵部図書寮文庫の「寛延四辛未年有徳院様 薨御之節之覚書」が提出された。代表者も14代家茂葬送に関連する史料を20点ほど翻刻した。しかしながら、年度当初に予定していたより成果は上がらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は最終年度に当たるため、蒐集史料の十分な検討を行い、研究をまとめるように進めていく。各将軍について薨去から葬送までの間に行われた様々な事柄を、蒐集した史料から具体的に示し、近世武家社会における構造的特質を明らかにしていく。 また、研究成果報告書を出版する。25年度中に翻刻依頼した史料の提出を督促すると同時に、必要な史料の翻刻を研究協力者に依頼する。代表者自身も必要な翻刻作業を進める。 本年度に調査予定であった国立国会図書館および国文学研究資料館の史料蒐集は、研究に当たって必要不可欠なため、26年度早々に調査を行う予定である。また、研究を進めるうえで、不足していることが判明した重要な史料については、適宜史料調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、当初購入予定のもので未購入の物品・図書があるため、未使用額が生じた。謝金については翻刻の提出が予定より少なく、大幅に未使用額が生じた。旅費は予定通り出張したが、他の科研費における調査と調整して行ったため、未使用額が生じた。その他については撮影が可能な史料が多く、未使用額が生じた。 物品費は史料調査等の研究に必要な物品や図書の購入を予定している。旅費として出張調査を1回計画している。場所は検討中である。研究協力者1名を同行予定である。人件費・謝金は、主に翻刻の原稿料として使用予定である。また、史料調査に参加する研究協力者1~2名分の謝金を支出する。年度前半に集中的に行いたい。前半は各月2回程度、後半は必要に応じて行いたい。その他は、主に研究成果報告書の出版費用に充てる。また史料調査において研究に必要な史料の複写費として使用する。その他、調査地までの交通費等に使用予定である。
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