2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720348
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
福島 恵 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (10523764)
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Keywords | 中国隋唐史 / 内陸アジア史 / 墓誌 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、墓誌史料の研究基盤となる情報の整理とその傾向分析を行い、史料の基礎的性格を解明することを目的とする。中国隋唐時代、死者とともに埋葬され、死者の功績とその血統などを数百の漢字で石刻して記した墓誌は、現在、当該時代の研究には不可欠な史料である。ただし、墓誌は、たった1件でもその豊富な内容から研究価値を有すること、墓誌の数が膨大であることから、これまで数量的な研究がされず、史料の基礎的性格があやふやなままであった。そこで、本研究では墓誌史料を数量的に扱い、研究基盤となる情報の整理とその傾向分析を行う。2012年度の研究実績は以下の通りである。 (1)隋・唐時代の墓誌史料の研究基盤情報の整理とその傾向分析 今年度は、周暁薇等編『隋代墓誌銘彙編附考』(1-6、線装書局、2007)を使用して、隋時代(全521件)墓誌史料の研究基盤情報(卒年・葬年・出土地・所蔵機関・サイズ・行数・文字数・字体など)の入力をほぼ完了させ、その傾向分析を進めている。また、唐時代の墓誌についても研究基盤情報のデータ入力を開始した。本年度は、データ入力などの資料整理のための補助者の協力を得ることができ、また随時、本研究に必要な書籍や備品を購入して研究環境を整えることはできた。 (2)ソグド人墓誌との比較および網羅的傾向分析の継続 ソグド人墓誌の網羅的収集とその墓誌内容と本文の電子データ化は、計画通りこれまでに継続して行うことができた。その成果として、唐代史研究会の夏季シンポジウムにて進出のソグド人墓誌を中心としたソグド人の東方移住について報告し、また、洛陽出土の「史多墓誌」を訳注し考察を加えた論文を学術雑誌に発表し、その他論文1本を論文集に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2011年度末に妊娠・出産したこと、そしてその後の育児のために、研究全体が遅れている。 (1)隋・唐時代の墓誌史料の研究基盤情報の整理とその傾向分析 データ入力などの資料整理のための補助者の協力を得て、2011年度中に予定していた隋代の墓誌史料の研究基盤情報の入力作業はほぼ完了し、現在は、傾向分析を進めている。また、今年度は、唐代の墓誌についてもデータ入力を開始したが、購入予定であった『隋唐五代墓誌彙編』(天津古籍出版社、1991-1992)、北京図書館金石組編『北京図書館蔵中国歴代石刻拓本彙編』(中州古籍出版社、1989)が絶版となっており、古書もないため購入できず、遅れを解消するまでには至らなかった。 (2)ソグド人墓誌との比較および網羅的傾向分析の継続 ソグド人墓誌の網羅的収集とその墓誌内容と本文の電子データ化については、計画通り行うことができた。その成果をもとに、唐代史研究会の夏季シンポジウムで報告し、また、論文2本を学術雑誌と論文集にて発表した。新出墓誌情報獲得のため、中国現地調査と京大人文研にて拓本調査も行う予定であったが、昨年出産した子供の育児のため行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の遅れを本年度中に可能な限り取り戻したい。 (1)隋・唐時代の墓誌史料の研究基盤情報の整理とその傾向分析 当初計画のよりも遅れている。そこで、今年度は、唐時代(全5100件:周紹良主編『唐代墓誌彙編』(上・下巻、上海古籍出版社、1992)と周紹良・趙超主編『唐代墓誌彙編続集』(上海古籍出版社、2000)掲載分)のデータ入力を完了させることを目標とし、その傾向分析は次年度に回すこととしたい。唐時代の墓誌のサイズや出土地は、『隋唐五代墓誌彙編』(天津古籍出版社、1991-1992)、北京図書館金石組編『北京図書館蔵中国歴代石刻拓本彙編』(中州古籍出版社、1989)を使用する予定であったが、絶版で手に入れることが2012年度中に購入できなかった。そこで、都内各所の図書館が所蔵しているものを使用することとし、データ収集の効率化のためにハンディスキャナを活用する。これらの墓誌史料の研究基盤情報の整理とその傾向分析について、計画の遅れを取り戻すためには、データ入力などの資料整理のための補助を得て活用することが最も効果的であると考えられる。 (2)ソグド人墓誌との比較および網羅的傾向分析の継続 これまでに継続して、ソグド人墓誌の網羅的収集とその墓誌内容と本文の電子データ化を行う。昨年度は、ソグド墓誌に見られる慣用句の分析を進め、その成果の一部を報告することができたが、本年度も引続いて、墓主がソグド人であると判明しており、生きた年代を明確に捉えられる生年の判明する男子(申請時より2件増加して現在のところ82名)に限定し、墓誌文に使用された慣用句を見いだし、その出典と使用されている意味の統計をとる。なお、新出墓誌情報獲得のため、中国への現地調査と、京大人文研にて拓本調査は、優先すべき経費の使用状況と研究計画の進展状況とを見て、可能な限り実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011・2012年度は、妊娠・出産・育児のために本研究を十分に進展させることができなかった。そのため、2011・2012年度で使用する予定であった研究費も未使用の部分がある。この遅れを取り戻すために最も効果的であると考えられるのは、データ入力などのための補助者の活用であると考えられ、本年度は、昨年度の経験を生かして増員したいと考えており、優先的にこの費用にあてたい。 また、申請時の計画にもあったように、唐代の墓誌史料の研究基盤情報の整理とその傾向分析を開始するにあたって、唐代墓誌史料に関する『隋唐五代墓誌彙編』(天津古籍出版社、1991-1992)、北京図書館金石組編『北京図書館蔵中国歴代石刻拓本彙編』(中州古籍出版社、1989)などの書籍を購入する予定であったが、絶版となっており、昨年度中まで購入できなかった。そこで、本年度は、都内各所の図書館に所蔵しているものを調査することに切り替える予定であり、そのデータ収集作業の効率化のために、ハンディスキャナの備品を優先して購入したい。 なお、中国での現地調査および京大への拓本調査は、上述した優先すべき経費の使用状況と研究計画の進展状況とを見ながら実施したい。
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Research Products
(3 results)