2012 Fiscal Year Research-status Report
中国農村部における社会保障についての文化人類学的研究
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23720417
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川口 幸大 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60455235)
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Keywords | 中国 / 広東 / 広州 / 珠江デルタ / 社会保障 / 移動 |
Research Abstract |
本研究では、中国農村部において近年導入されつつある年金・医療保険といった社会保障の現状と問題点を人類学的な視点から明らかにすることを目的としており、平成24年度には下記の通りの実績を上げた。 第一に、国内外の文献調査によって、社会保障の現状には、戸籍制度が不可分に関わっているということが明らかになった。中国における戸籍制度は、都市戸籍と農村戸籍に大別でき、後者、つまり農村戸籍の者およびその子弟は、都市に移住した場合などに教育や保険などの面で、都市戸籍の者と比較して極めて不利な条件に置かれる。また退職者についても、かつての職場から手厚い保障が得られる都市戸籍者とは対照的に、農村戸籍者にはよるべき社会保障がほぼ皆無である。 第二に、広州市近郊の農村部における現地調査によって次の点が明らかになった。現在の中国では都市は農村と比較して教育と医療水準が圧倒的に高いために、若者は就業時に、親は子どもの就学時に都市に移住するケースが多いが、その流れは広州等の大都市ではなく、近隣の中規模都市に向かっている。これは移住しても、出身村との往来を持続させているということであり、子の面倒や親の世話といった、上述の手薄な社会保障を自らカバーしようという戦略である。 総括すると、本年度においては、上記の通りの文献調査と現地調査を連関させて、中国の社会保障の現状、問題点、および人々による対策を明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度および第二年時に計画していた、文献調査、およびフィールドでの現地調査がほぼ予定通り遂行できた。 文献調査では、関連分野の日・中・英語による文献リサーチを行うことができ、実績の概要で記した通りの成果を得た。 またフィールド調査においても、当初の計画通り、中国における現地調査を遂行でき、社会保障の現状と問題点について、実績の概要で記した通りの成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針は以下の通りである。 第一に、成果の公開に向けて、理論面での深化を目指し、地域を横断した社会保障分野の研究について、文献リサーチを行う。これについては、平成25年10月に広州市の図書館および資料館にて行う。 第二に、すでに遂行中であるフィールド調査を継続させ、問題点のより詳細な分析を行う。平成25年8月に、広州市近郊の農村部における現地調査を計画している。 第三に、最終年度の成果公開のために、国内外の学会・シンポジウム、およびジャーナル等における発表を積極的に行う。具体的には、平成25年6月の日本文化人類学会(慶應大学)、同年8月の国際人類学研究大会(マンチェスター)にて、関連主題の報告を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 旅費としては、8月に予定しているフィールド調査において、調査研究旅費として300,000円、10月に予定している資料収集旅費として100,000円、成果発表旅費として100,000円を使用する。また人件費・謝金としては、成果公開のための外国語論文の校閲費として50,000円を使用する。 物品費としては、社会保障関連の書籍購入費として50,000円、資料整理と成果発表のためのノートパソコン購入費として800,000円、文具(ファイル、ノート、筆記用具)代として20,000円をそれぞれ使用する。
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