2012 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国の社会・文化的「周縁」における暴力や痛みに関する文化人類学的研究
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23720430
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
中村 寛 多摩美術大学, 造形表現学部, 准教授 (50512737)
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Keywords | 文化人類学 / 周縁 / 暴力 / 社会的痛苦 / アメリカ社会 / 文化表現 |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ国内の社会・文化的「周縁(margin)」に着目し、そこでの語りや対話、価値や制度の再構築のプロセスを明らかにするという全体構想のもとで行われている。一年目の研究成果、とりわけフロリダ州、ルイジアナ州、オクラホマ州での先住民コミュニティに関する調査・研究成果を踏まえ、二年目である平成24年度は、ニューメキシコ州サンタフェで調査を行なった。サンタフェの「インディアン・マーケット」では先住民たちによるアート表現に多く触れることができ、またそこで知り合った人びとのネットワークをたよりに、その他の調査地にも足を踏み入れることできた。なかでもサント・ドミンゴ・プエブロ出身の人物との出会いによって、リザベーション内の施設や町の生活の様子をフィールドワークすることができ、多くの知見を得ることができた。サンタフェ周辺の美術館、ギャラリー、博物館は先住民アートや先住民関連の資料であふれているため、今後も戻って来る調査地になり得る。ニューヨークの滞在においては、ハーレムに在住しニューヨークでフィールドワークを重ねている社会学者テリー・ウィリアムズと意見交換の機会を持ち、アメリカ社会および日本社会の都市における諸問題の比較や、先住民とアフリカ系アメリカ人の歴史的・社会的関係について議論を行なった。また、都市再開発やコロンビア大学によるハーレム西側へのキャンパス拡大に注意を向け、現在刻一刻と移りゆくハーレムの姿を写真におさめてまわった。さらに、すでにネットワークのあるアフリカ系アメリカ人ムスリムたちと会い、話を聞く機会を持った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目は、一年目の成果を踏まえ、本研究の中心的なフィールドであるニューヨークでの調査に加えて、ニューメキシコ州に焦点を当て、先住民たちによる文化施設や博物館、ギャラリー、美術館などを足がかりに、文化表象のあり方、社会問題の捉えられ方を調査しようとした。調査の過程で、サンタフェ市近くのサント・ドミンゴ・プエブロの住民と知り合い、生活状況や置かれた歴史的位置、などに関して、貴重な知見を得た。今後、アフリカ系アメリカ人と先住民の関係を捉え、より広い視野での比較を行うため、「周縁」というテーマを念頭に、可能な限りアメリカ社会の全景把握を試みた。こうした探求は、「研究の目的」において挙げた宮本常一や鶴見良行の仕事を念頭に置いてのことで、フィールドワークを通じて社会の諸問題を捉え直す試みだった。その際、先住民コミュニティにおいて注目したのは、黒人と先住民との関係である。一年目は、とりわけ「ブラック・セミノール」や「マルーン」が先住民によってどのように語られるのかに着目することができた。また二年目は、先住民たちのアート表現に多く触れ、それらの表現がどのような問題に向き合うなかでつくられたものか、その一端に触れることができた。その意味では二年目の研究は、示唆的であり意義深いものだったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目は、ニューヨークおよびニューメキシコ州においてさらなるフィールドワークを重ねると同時に、その他の場所――テキサス州、アリゾナ州など――にも足を伸ばし、資料収集および参与観察を行いたい。ニューヨークにおいては、ハーレムのさらされている急速な変化をつぶさに観察し、フィールドワークする。また二年目に訪れたニューメキシコ州でのネットワークを用いて、その他のエリアをフィールドワークする。テキサスやアリゾナにおいては、先住民たちの文化施設や博物館、ギャラリーなどを足がかりにして、非先住民コミュニティとの関係や、社会の諸問題の表象の仕方を明らかにしたい。また、現時点ではまだ設計中であるホームページについても、開設の手続きが取れ次第、研究成果の一部を公開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のうちのほとんどを海外での現地調査に使用する。残りの額は、関連図書や現地で収集する資料の購入、ホームページ設計費などにあてる。
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Research Products
(2 results)