2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国の社会・文化的「周縁」における暴力や痛みに関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
23720430
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
中村 寛 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (50512737)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 社会・文化的「周縁」 / アメリカ社会 / 語り・対話 / 価値・制度の(再)構築 / 文化表現 / 暴力と反暴力/非暴力 / 社会的痛苦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカ国内の社会・文化的「周縁」に着目し、そこでの価値や制度の生成プロセスを明らかにするものである。一~三年目のフロリダ州、ルイジアナ州、オクラホマ州、ニューメキシコ州、ハワイ州ハワイ島、モロカイ島での調査を踏まえ、最終年度はハワイ島、マウイ島を訪れた。いずれも、先住民コミュニティに焦点を当てつつ、新たに住み着いた者による文化運動にも注目したフィールドワークだった。また、最終年度は研究代表者が海外研修でアメリカ国内に長期滞在していたため、ニューヨーク市でもハーレムを中心にいわゆる社会的マイノリティが集住する地区で調査を行なうと同時に、本研究に不可欠な理論的探究を深めるべく文献・資料収集を行ない、共同研究者であるテリー・ウィリアムズ氏らや社会問題に強い関心を示すアーティストや音楽家たちと対話の機会を持った。なかでも難民問題に強い関心を示し、それをテーマに舞台パフォーマンスを発展させようとするアーティスト、クリスティーナ・コロヴィック氏やサラ・ガラシーニ氏らとの対話は、今後の共同研究にも深くかかわる種類のものだった。こうしたアーティストや音楽家たちとの対話は、研究協力者である松尾眞氏の助力を得て進めた。さらに海外研修中は、トランジッション・タウンとして注目を集めるイギリス・デヴォン州トトネスに滞在し、町ぐるみの文化運動のあり方をフィールドワークすると同時に、シューマッハ・カレッジやプリマス大学を訪れ、文化のつくり手やアーティスト、研究者との対話の機会を得た。この滞在は、「周縁」における取り組みをひとつの社会を超えて比較し、見つめなおすうえで効果的だった。とりわけプリマス大学トランステクノロジー・リサーチのマイケル・プラント氏およびマーサ・ブラスニッグ氏との対話は、本研究に理論的深みをもたらすだけでなく、今後の対話的共同プロジェクトにもつながる有益なものだった。
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