2011 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ法・オーストリア法を素材とした行政不服審査制度の比較研究
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23730019
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大江 裕幸 信州大学, 経済学部, 講師 (60598332)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 行政不服審査 / ドイツ / オーストリア |
Research Abstract |
本研究課題は,ドイツ法およびオーストリア法を素材とした行政不服審査制度の比較法研究である。本年度は,まず,研究遂行の前提としてわが国における従来の議論状況を確認する作業を行った。同時に,内閣府の行政救済制度検討チームにおいて進められていた行政不服審査法の改革など行政救済制度のあり方についての検討状況を随時確認し,その改革が実現した場合の理論的なインパクトについて検討を加えた。こうした作業と並行して比較法研究を行ったが,本年度は国内での文献入手が比較的容易であるドイツ法についての検討を重点を置くことになった。ドイツにおいては,1990年代半ば以降の行政手続の簡素化の流れの中で,行政不服審査制度についてのラントの立法裁量を拡大する旨の法改正が行われ,これを受けて,いくつかのラントにおいては行政不服審査制度が廃止されるに至ったという改革の動向を確認した。また,行政不服審査制度を廃止したラントにおいては,これを廃止したことによるメリット,デメリットについての議論が行われているが,その議論状況の確認を行った。さらに,行政不服審査制度を廃止したラントにおいては,行政上の調停の役割が,理論上も実務上も注目されるに至っているという議論状況を確認した。オーストリアについては,行政裁判制度を改革する旨の政府提出法案が審議中であり,その法案の中に,現在オーストリアにおける行政不服審査制度の一翼を担っている独立行政審判所を廃止する内容が盛り込まれていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内では入手困難,あるいは入手不可能である文献を入手するため,本年2月を目途にドイツ・オーストリアへの海外出張を行う予定であったが,他の業務との兼ね合いから断念せざるを得なかった。そのため,研究遂行のための資料収集という点で,当初の計画より若干の遅れが生じている。また,これと関連して,国内で入手可能な文献のみにより研究を遂行したため,研究の進展それ自体についても当初の予定より遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の成果を前提に,より重点的に検討すべき事項について掘り下げて検討を加え,その成果を取りまとめる。具体的には,ドイツについては,異議審査請求を廃止したラントにおける廃止のメリット,デメリットについての分析を掘り下げ,行政手続,行政訴訟への影響に留意しながら検討を加え,わが国の解釈論,立法論にとって参考となりうる点を明らかにする。また,異議審査請求の代替的機能を果たすものとして近時注目されている行政上の調停の役割,理論的な位置付けに検討を加え,わが国の立法論にとって参考となりうる点を明らかにする。オーストリアについては,行政不服審査制度に大きな影響を与える法案について,その背景,その内容,行政不服審査制度に与える影響を分析する。また,わが国においても,閣府の行政救済制度検討チームの取りまとめに即して制度改正が行われることが予想されるため,ドイツ法,オーストリア法についての検討により得られた知見を踏まえて,改正の意義についての検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述のとおり,本年度予定していた資料収集のためのドイツ,オーストリアへの海外出張を断念せざるを得ず,予定していた旅費,資料収集費を次年度に繰り越すこととなった。特に,オーストリア法については,現地での資料収集が不可欠であり,重大な法改正が進行中であることから,今年度は海外出張による資料収集に研究費を重点的に用いる予定である。次年度の海外出張は1回を予定していたが,法改正の進行にあわせて複数回現地での資料収集を行う必要があると考えられるため,前年度からの繰り越し分を利用して夏,冬に海外出張を行う予定である。
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