2012 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ法・オーストリア法を素材とした行政不服審査制度の比較研究
Project/Area Number |
23730019
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大江 裕幸 信州大学, 経済学部, 講師 (60598332)
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Keywords | 行政不服審査 / ドイツ法 / オーストリア法 |
Research Abstract |
本研究課題は,ドイツ法およびオーストリア法を素材とした行政不服審査制度の比較法研究である。昨年度の成果を踏まえ,ドイツ法については,行政不服審査制度を全面的または部分的に廃止した州について,その詳細や,その後の取り組みを調査した。その結果,一部の州においては,行政不服審査制度を部分的に廃止する一方で,行政不服審査制度を残存させた領域については手続の透明化などの改善を施した上で活用を図るという例が見られるということを確認した。こうした動向から,単純に行政不服審査制度を維持するか廃止するという二者択一の議論ではなく,行政不服審査制度が有効に機能する領域を見極めた上で,手続の改善等を通じてその充実を図るという道を探る余地があることを明らかにした。オーストリア法については,2012年憲法改正に基づく行政裁判制度改革により2014年から行政裁判制度が二審級化されることに伴い,行政不服審査制度の一翼を担ってきた独立行政審判所が州単位の第一審行政裁判所に改組されることとなったことに加え,数多く存在していた権利救済機関の多くが廃止されることにより,独立性を有する行政機関による行政不服審査制度の基盤が大幅に失われるに至ったということを明らかにした。さらに,わが国の異議申立てないし審査請求に相当する通常の行政不服審査手続についても,一部を残して廃止されることとなったことを確認した。ただし,この改革はオーストリアにおける従来の行政裁判制度と行政不服審査制度の均衡を前提として,その重点を変更させるという性質のものと理解することが可能であり,直ちにわが国にとっての参考としうるものではないと考えられる。この認識に立脚した上で,今後生じうる行政不服審査制度を大幅に縮減したことによる影響の有無,程度を検証し,わが国にとっての示唆を見極めていく必要がある。
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Research Products
(1 results)